
H形鋼
H-Shape Steel (H-Beam)
H形鋼とは
H形鋼は、断面がアルファベットのH字に似た形鋼です。上下の平行なフランジと、それをつなぐウェブから成ります。建築の鉄骨造で柱や梁に最も多く使われ、土木の杭や桟橋でも標準的な部材です。寸法や許容差はJIS G 3192(熱間圧延形鋼の寸法、形状、質量及びその許容差)に規定されています。
断面の特徴として、フランジが材の外側に大きく張り出しているため、強軸まわりの曲げに対して材料を効率よく使えます。同じ質量なら、I形鋼や溝形鋼よりも曲げに強く、フランジ幅が広いので横方向の安定性や接合のしやすさにも優れます。
種類と寸法表記
H形鋼は、高さとフランジ幅の比で、広幅・中幅・細幅に大別されます。一般に、柱には幅の広い広幅系、梁には細幅系が使われます。
寸法は「H-高さ×幅×ウェブ厚×フランジ厚」の順に表記します。たとえば次のようなサイズがあります。
- H-400×200×8×13:細幅系。梁によく使われるサイズ
- H-300×300×10×15:広幅系。柱によく使われるサイズ
このほか、鋼板を溶接して組み立てる溶接組立H形鋼(BH、ビルトH)があります。圧延材に規格サイズがない大断面や、特殊な寸法が必要な場合に使われます。
材質は、一般構造用のSS400のほか、建築構造用のSN材(SN400B、SN490Bなど)、溶接構造用のSM材などが使われます。どの材質を使うかは設計図書で指定されます。受入時にはミルシート(鋼材検査証明書)で材質とロットを確認します。詳しくは鋼材受入検査や材料試験証明書の項目を参照してください。
現場・仮設での使われ方
鉄骨工事では、柱梁の主要部材として高力ボルトの摩擦接合や溶接で接合します。柱と梁が取り合う部分には、角形鋼管柱ならダイアフラム、H形鋼柱ならスチフナを設けて力を伝えます。梁端のフランジとウェブの取り合いでは、溶接のためにスカラップを設ける方法がありますが、近年は応力集中を避ける形状(ノンスカラップ工法など)を採用する例も多くあります。
仮設鍛冶工事や山留め工事でも、H形鋼は欠かせません。親杭横矢板工法では、H形鋼を地中に打ち込んで山留め壁をつくります。腹起しや切梁にもH形鋼が使われ、リース材を活用する場面が多くあります。
強軸・弱軸と横座屈、取扱い上の注意
H形鋼には、断面の強い方向(強軸)と弱い方向(弱軸)があります。梁として使うときは、ウェブを縦に置いて強軸まわりの曲げを負担させるのが基本です。一方、細長い梁では、圧縮側のフランジが横方向にはらみ出し、ねじれながら変形する横座屈が問題になります。このため、小梁や胴縁で横方向の拘束を入れたり、横補剛材を設けたりします。
仮設で使う場合は、とくに建方中の状態に注意が必要です。建方の途中は、床や小梁が未施工で、本来設計で想定している補剛が効いていないことがあります。強風や荷重の偏りに備え、仮ボルトの本数や仮のブレース・控えの要否を、事前に検討しておきます。
吊り込みの際は、玉掛けの方法に注意します。フランジの縁は鋭いので、ワイヤーが傷んだり、鋼材のエッジに当たって滑ったりしないよう、当て物を使います。長尺物は吊り点の位置によってたわみが変わるため、クレーン作業の計画では重量と重心を確認します。
切断や孔あけをする場合は、断面欠損が部材の耐力に影響するため、必ず設計者や施工管理者の承認を得てから行います。
柴田工業の現場から
H形鋼は仮設でも本設でも使う基本の鋼材です。調達では、サイズだけでなく材質とミルシートの有無も必ず確認します。リース材と新材で単価も工程も変わるので、積算の段階から用途をはっきりさせておくことが大切です。