
ダイアフラム
Diaphragm (Steel Column Diaphragm Plate)
ダイアフラムとは
ダイアフラム(diaphragm)は、鉄骨造の柱と梁が取り合う仕口部で、梁フランジの高さに合わせて柱の内部または外周に設ける水平の鋼板です。「隔膜」を意味する英語が語源で、柱の内部を仕切るように入ることからこう呼ばれます。
梁が曲げを受けると、梁フランジには引張力と圧縮力が生じます。この力が柱の壁面に直接かかると、とくに角形鋼管柱のような薄い壁面は面外へ変形しやすくなります。ダイアフラムは、この力を柱断面全体へ滑らかに伝え、仕口部の剛性と耐力を確保するための部材です。
ダイアフラムの主な形式
角形鋼管柱では、一般に次の3形式があります。
- 通しダイアフラム:柱を梁フランジの位置で切断し、その間にダイアフラムを挟んで上下の柱を溶接する形式です。ダイアフラムが柱の外側へ張り出し、梁フランジはその張出し部に接合されます。力の伝達が確実で、工場製作の鉄骨で広く使われています。
- 内ダイアフラム:柱の内側にダイアフラムを組み込む形式です。柱の外面に出っ張りがなく、梁フランジを柱面に直接取り付けられます。閉鎖断面の内部には手が入らないため、最後の溶接にはエレクトロスラグ溶接が用いられることが多くあります。
- 外ダイアフラム:柱の外側にリング状や板状の補強板を取り付ける形式です。外側から溶接できるのが特徴ですが、外観に突起が出るため、仕上げや納まりの検討が必要です。
H形鋼を柱に使う場合は、ダイアフラムではなく、フランジ位置にスチフナ(補剛材)を入れるのが一般的です。
製作・施工上の要点
ダイアフラムと柱の接合には、応力を確実に伝えるため、完全溶込み溶接が用いられます。溶接部は裏当て金やエンドタブの扱い、開先形状の管理が品質を左右します。完成後はUT検査(超音波探傷)で内部欠陥を確認します。
通しダイアフラムは、柱の板厚方向に引張力がかかる形になります。そのため、板厚方向の性能を担保したSN材のC種などを使う設計が一般的です。ダイアフラムの板厚は、取り付く梁フランジより厚くするのが通例で、具体的な板厚は設計図書で必ず確認します。
これらは主に鉄骨製作工場で行われる作業です。ただし現場側でも、鉄骨工事の建方の段階で、仕口部の位置や寸法を施工図や工作図と照合しておく必要があります。仮設鍛冶工事で柱の仕口付近に仮設金物を取り付ける場合は、ダイアフラムや溶接部への影響を避けるため、設計者・鉄骨製作者の確認を取ったうえで位置を決めます。
通し・内・外の選び方と冷間成形角形鋼管
角形鋼管柱には、BCRやBCPといった冷間成形角形鋼管が使われることが多くあります。冷間成形では、角部(コーナー部)が加工で硬化し、靭性が低下しやすくなります。そのため、角部付近に溶接を行う仕口では、ダイアフラムの形式や溶接方法が耐震性能に関わります。
通しダイアフラム形式は、柱を切断してダイアフラムを挟み込むため、柱の角部とダイアフラムの溶接位置が離れています。内ダイアフラム形式は、外観がすっきりして梁の取り合いが単純になる反面、柱内部の溶接をエレクトロスラグ溶接などで行うため、製作工場の設備と技量に依存します。外ダイアフラム形式は、柱の外側で溶接できる反面、突起が残ります。
どの形式を採用するかは、構造設計者が柱の種類や仕口の要求性能、製作工場の能力を踏まえて決めます。現場側が形式を選ぶことは少ないのですが、形式ごとに柱の継手位置や、建方時の仮ボルトの取り方が変わります。そのため、工程や仮設計画に影響する点は事前に把握しておくべきです。
また、ダイアフラムの位置は柱の継手や梁の高さと連動します。梁天端の変更や設計変更が生じた場合は、柱・ダイアフラム・梁のすべてに波及します。製作済みの鉄骨に手を加える手戻りを避けるため、図面の最新版管理が欠かせません。
柴田工業の現場から
ダイアフラムは工場で入る部材なので、現場では見えにくいのですが、仕口の強さを決める要です。仮設金物を柱に付けるときは、溶接位置が仕口に近くないか、必ず図面で確認してから段取りするようにしています。