腹起しに関する建設現場イメージ
WALER

腹起し

Waler

現場用語
はらおこし

腹起しとは

腹起し(はらおこし)とは、山留め工事において土留め壁の内面に沿って水平方向に設置される鋼材です。主にH形鋼が使用され、土留め壁にかかる土圧を受け止めて切梁(きりばり)に伝達する役割を果たします。

土留め壁には地盤全体から均等に土圧がかかりますが、切梁は一定間隔でしか設置できません。腹起しは壁面に連続して取り付けられるため、面で受けた土圧を線状に集約し、切梁の設置箇所に力を集中させる「力の橋渡し役」として機能します。

腹起しがなければ、切梁と切梁の間の壁面が土圧に耐えきれず、局所的に変形や破損を起こす危険性があります。そのため、切梁と腹起しは常にセットで設計・施工される不可分のパートナーです。

切梁との関係

山留め支保工は、土留め壁・腹起し・切梁の三者が一体となって機能するシステムです。それぞれの役割を整理すると、土留め壁が地盤と掘削空間を仕切る「壁」、腹起しが土圧を集約する「帯」、切梁が掘削空間を横断して壁同士をつなぐ「つっかえ棒」という関係になります。

腹起しと切梁の接合部は、応力が集中する重要なポイントです。この接合部にはブラケットやピースと呼ばれる金物を使い、確実に力が伝達されるよう施工します。接合が不十分だと、腹起しが切梁から外れて支保工全体が崩壊する恐れがあるため、施工管理における施工精度の管理が極めて重要です。

また、腹起しの継手部分も弱点になりやすい箇所です。長い壁面に対して1本の腹起しで対応できない場合は、添板(そえいた)とボルトで接合しますが、この継手位置が切梁の直近に来ないよう配置計画を行います。

山留め壁の種類

腹起しが取り付けられる山留め壁には、いくつかの種類があります。代表的なものを紹介します。

シートパイル(鋼矢板)は、波型の断面を持つ鋼板を地中に打ち込んで壁を形成する工法です。止水性が高く、地下水位が高い現場で多く使用されます。腹起しはシートパイルの凹凸に合わせて取り付けるため、フィラー(隙間材)で面を均してから設置します。

親杭横矢板(おやぐいよこやいた)は、H形鋼を一定間隔で地中に打設し、その間に木製の矢板を挿入して壁を形成する工法です。比較的簡易で経済的ですが、止水性は低いため、地下水の少ない現場に適しています。腹起しは親杭のフランジにボルトで固定します。

連続地中壁(れんぞくちちゅうへき)は、地中にコンクリートの壁を構築する工法です。剛性が非常に高く、大深度掘削や重要構造物に隣接する工事で採用されます。腹起しはアンカーボルトを壁面に埋め込んで固定します。

「腹起し」の語源と多段設置の技術

「腹起し」という名前は、土留め壁の「腹」(内面)を「起こす」(支える)という意味に由来しています。土圧で内側に押されようとする壁面を、まるで腹を抱えて起こすように支える様子が名前の由来です。建設業界には、このように部材の機能や形状を直感的に表した専門用語が数多くあります。

深い掘削工事では、掘削の進行に合わせて複数段の腹起しと切梁を設置していきます。1段目の腹起しを設置して掘削を進め、次の深さに達したら2段目を設置するという工程を繰り返します。この多段設置では、各段の腹起しの高さ(レベル)を正確に管理することが極めて重要です。

各段の腹起しは水平度を保つ必要があります。少しでも傾いていると、切梁に偏心荷重がかかり、座屈のリスクが高まります。そのため、施工時にはレベル測量を頻繁に行い、ミリ単位の精度で設置位置を管理します。これは品質管理の観点からも極めて重要なポイントです。

また、掘削が深くなるほど下段の腹起しには大きな土圧がかかるため、下段ほど大きな断面のH形鋼を使用するのが一般的です。最上段はH-300クラス、最下段はH-400やH-500クラスといったように、段ごとにサイズアップしていくケースが多く見られます。

腹起しの設置・撤去は、仮設鍛冶工事を担う現場の仮設鍛冶工が担当する専門性の高い作業です。重量のある鋼材をクレーンで吊り込み、限られた掘削空間の中で正確に位置決めするには、豊富な経験と高い技術力が求められます。

語源
壁面の「腹」を「起こす」(支える)
パートナー
切梁とセットで機能
配置
掘削深度に応じて多段設置

柴田工業の現場から

吉川友也
吉川 友也 製作金物工事担当

腹起しと切梁は常にペア――僕はパートナーだと思っています。掘削壁に沿って腹起しを据えるには精密なアライメントが欠かせません。大成建設のようなスーパーゼネコンの都心現場では、この仮設工事にも本設と同じレベルの品質チェックが入ります。きちんと勤務時間が決まっているので、電車で無理なく帰宅できるのも、建設業のイメージとはだいぶ違うと思いますよ。

柴田工業の施工管理スタッフ募集
RECRUIT

知識ゼロからでも、
街をつくれる人になる。

施工管理・施工図スタッフ募集中。
年間休日約120日・賞与年2回・資格取得全額支援。