
随意契約
Negotiated Contract (Discretionary Contract)
随意契約とは
随意契約とは、競争入札の手続きをとらず、発注者が任意に選んだ特定の相手方と交渉して契約を結ぶ方式です。国の契約については会計法第29条の3第4項に根拠があり、具体的な要件は予算決算及び会計令(予決令)に定められています。地方公共団体の場合は、地方自治法施行令第167条の2に該当する場合に限られます。
公共工事では、一般競争入札が原則で、指名競争入札と随意契約はどちらも例外です。随意契約はとくに、公正性や透明性の観点から適用できる場面が厳しく限定されています。
公共工事で認められる主な場合
法令上、随意契約が認められる典型例は次のとおりです。
- 契約の性質や目的が競争を許さない場合(特定の技術や設備でしか対応できない場合など)
- 緊急の必要があり、競争に付す余裕がない場合
- 予定価格が少額で、法令が定める額を超えない場合
- 競争入札に付しても入札者がなかった場合や、落札者が契約を結ばなかった場合(予決令第99条の2、第99条の3など)
入札が成立しなかった後の随意契約は「不落随契」と呼ばれ、再度入札を行っても落札者が決まらなかったときに、予定価格の範囲内で交渉して契約相手を決めます。このほか、仕様の提案を募って最も優れた提案者と契約する「企画競争」や、参加希望者を公募して確認する「公募型」などの運用もあります。少額の基準額は国と地方で異なり、改正されることもあるため、実際に確認するときは最新の規定を見る必要があります。
民間工事での随意契約・特命発注
民間工事には、会計法のような契約方式の制約はありません。発注者が信頼できる施工者を直接選ぶ特命発注(随意契約)も、複数社から見積を取って比較する相見積(あいみつ)もよく行われます。ゼネコンが鉄骨工事や仮設鍛冶工事の協力会社を選ぶ場面でも、過去の取引実績、品質・工程の信頼性、安全面の評価をもとに、特定の会社に見積を依頼することがあります。
下請取引で気をつけること
随意契約では競争原理が働きにくいので、価格交渉が当事者間に委ねられます。建設業法では、注文者が自己の取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額で請負契約を結ぶことを禁止しています(第19条の3)。また、請負契約の内容を書面に記載して交付することも義務づけられています(第19条)。特命だからといって条件があいまいなまま着工すると、後から追加工事や仮設の範囲をめぐるトラブルになりやすいです。見積条件書には次の事項を明記しておきます。
- 図面や仕様の範囲(設計図書との関係)
- 工期と工程の前提
- 支給材や仮設設備の負担区分
- 設計変更が生じたときの精算方法
こうした条件を事前に固めておくことが、原価管理の土台になります。
随意契約と透明性の確保
公共調達では、随意契約に対する見直しが進められてきました。国は、競争性のない随意契約を原則として見直し、一般競争入札や企画競争などへ移行する方針を示しています。随意契約を結ぶ場合も、理由を明確にし、契約結果を公表することで透明性を確保する運用が求められます。
民間の元請と下請の関係でも、「いつも同じ会社に頼むから」という慣れだけで進めず、契約書、見積書、変更合意書といった書面で条件を残す姿勢が重要です。仕様変更や工程変更が起きたときに、書面の根拠があれば協議がスムーズになります。随意契約は、相互の信頼を前提にしていてもなお、書面と記録によって自社を守る仕組みを整える必要があります。
柴田工業の現場から
長いお付き合いの元請さんから直接ご依頼をいただくことも多いのですが、そういうときこそ契約書や注文書、見積条件を丁寧に残すようにしています。あとで『言った言わない』にならないように、書面で確認しておくのが事務の大事な仕事だと思っています。