
指名競争入札
Selective Tendering (Designated Competitive Bidding)
指名競争入札とは
指名競争入札とは、発注者があらかじめ、資力・信用・施工実績などの点で適当と認める複数の業者を指名し、その指名された者だけで入札を行わせ、原則として最も有利な条件を示した者と契約する方式です。国の契約については会計法第29条の3第3項、地方公共団体の契約については地方自治法施行令第167条などに根拠があります。公共工事の契約方式としては、一般競争入札、指名競争入札、随意契約の三つが基本形です。
指名の対象になるのは、発注機関が実施する競争参加資格審査を通って有資格者名簿に登載された業者です。建設工事の場合、この審査では経営事項審査の結果が重要な材料として使われます。
一般競争入札・随意契約との違い
会計法は、契約を公告して広く申込みをさせる一般競争入札を原則としています。指名競争入札と随意契約は、法令が定める場合に限って認められる例外です。指名競争入札が認められるのは、おおむね次のような場合です。
- 契約の性質や目的から、一般競争に適さない場合
- 参加者が少数で足りる場合
- 一般競争に付すことが不利と認められる場合
一般競争は参加者を広く募るので透明性や競争性が高くなりますが、事務負担は大きくなります。指名競争は参加者を絞るため事務が軽くなる反面、どの業者を指名するかという発注者の裁量が入ります。随意契約は競争そのものを行わず、特定の相手と交渉して契約します。
指名から落札までの流れ
一般的な流れは次のとおりです。
- 発注者が指名基準に基づき、有資格者の中から指名業者を選定する。
- 指名通知とあわせて、設計図書(設計図書)や特記仕様書、現場説明の内容を示す。
- 各社が積算して入札書を提出する。
- 開札し、予定価格の範囲内で最も有利な者を落札者とする。
指名の基準は発注機関ごとに定められており、過去の工事成績、同種工事の施工実績、技術者の配置見込み、所在地、手持ち工事の状況などが考慮されます。談合などの不正行為や重大な事故・契約違反があった業者には、発注機関が定める要領に基づいて指名停止の措置がとられます。
長所と課題
長所は、施工能力が確認できた業者に絞ることで、不適格な業者を排除しやすく、発注事務も効率化できることです。課題は、参加者が固定化しやすく、新規参入が難しいことです。談合が起きやすいという指摘もあります。こうした理由から、国や多くの自治体では一般競争入札の適用範囲が広がってきました。公共工事の入札契約適正化法などにより、入札・契約過程の透明性の確保も求められています。
下請・協力会社の立場から
鉄骨工事や仮設鍛冶工事を専門とする会社は、公共工事の入札に直接参加するより、ゼネコンから見積依頼を受けて受注するのが一般的です。民間工事では、ゼネコンが複数の協力会社に見積を依頼することを「指名」と呼ぶ場合があります。しかしこれは法令上の指名競争入札ではなく、あくまで商慣行上の見積合わせです。ただ、公共工事の元請の選定方式を理解しておくと、どのような技術者配置や実績が求められるか、発注の背景を読み解くのに役立ちます。
指名の公平性と不正防止
指名競争入札では、誰を指名するかが結果を大きく左右します。そのため、指名基準を明文化して公表し、選定の経緯を記録に残すことが公平性の担保になります。一方、入札参加者が事前に話し合って落札者や価格を決める談合は、独占禁止法で禁止されている不当な取引制限にあたります。公務員が関与した場合には、いわゆる官製談合防止法の対象にもなります。
建設会社の側から見ると、談合は発覚すれば指名停止、課徴金、社会的信用の失墜につながる大きなリスクです。コンプライアンス管理の対象として、入札・見積に関わる社員が競合他社と価格や受注予定について話さないことを、社内ルールとして徹底する必要があります。協力会社として見積を提出する場面でも、同業者との情報交換には注意が必要です。
柴田工業の現場から
当社は元請の入札に出る立場ではなく、ゼネコンさんからの見積依頼が仕事の入口です。ただ公共工事がどんな方式で発注されているかを知っておくと、元請さんが何を重視して下請を選ぶのか、仕様や工程の求められ方が見えてきます。積算するときも、その背景を意識しています。