
水セメント比
Water-Cement Ratio (W/C)
水セメント比とは
水セメント比(W/C)とは、フレッシュコンクリート(まだ固まらない状態のコンクリート)に含まれる水とセメントの質量比を、百分率で表した値です。たとえば水セメント比50%は、セメント100kgに対して水50kgという割合を意味します。コンクリートの強度、耐久性、水密性を左右する最も基本的な指標であり、調合を決める際の出発点になります。
セメントは水と化学反応(水和反応)を起こして硬化します。水和に必要な水はセメント質量のおよそ25%とされています。それを超える水は、施工に必要な流動性を与えるためのものです。余った水は硬化の過程で抜けて細かな空隙になり、強度の低下、中性化の進行、乾燥収縮によるひび割れの原因になります。水セメント比が「コンクリートの質」を決めるといわれるのはこのためです。
強度・耐久性との関係
一般に、水セメント比が小さいほどセメントペーストは緻密になり、圧縮強度は高くなります。セメント水比(水セメント比の逆数)と圧縮強度がほぼ直線的な関係になることは、古くから知られています。水セメント比が小さいコンクリートは、中性化や塩化物イオンの浸入、凍結融解、透水に対しても抵抗性が高くなります。鉄筋や鉄骨まわりのコンクリートでは、鋼材の腐食を遅らせる効果もあります。
反対に、水セメント比を小さくしすぎると粘性が高まり、ポンプ圧送や締固めが難しくなります。そのため実際の調合では、強度や耐久性の要求から水セメント比の上限を決め、その範囲でワーカビリティーを確保するために混和剤(AE減水剤、高性能AE減水剤など)を使います。水セメント比の最大値は、日本建築学会のJASS 5などの標準仕様書や、設計図書、特記仕様書で定められます。
現場での管理ポイント
水セメント比は、生コン工場が作成する調合計画書で決まる値です。現場で直接測れるものではなく、受け入れ時に調合計画書や納入書を確認し、スランプ、空気量などの試験結果で品質を確かめます(レディーミクストコンクリート、スランプ試験)。材料受け入れ検査の一環として、荷卸し時の状態を必ず確認します。
現場で最も注意すべきなのは、流動性が足りないからといって水を加えることです。加水すると水セメント比が上がり、設計した強度や耐久性が確保できなくなります。打設が遅れてコンクリートが硬くなった場合も、安易な加水はせず、監督職員や生コン工場と協議して対処します。
鉄骨造では、デッキプレート上のスラブ、柱脚の根巻き、ベースプレート下の充填など、鉄骨と接するコンクリートやモルタルが多くあります。これらの部位でも練混ぜ水量の管理は同じように重要です。たとえば無収縮モルタルは、製品ごとに指定された水量で練り混ぜます。水量の増減は強度と無収縮性能の両方に影響するため、必ず指定値を守ります。
水セメント比と水結合材比の違い
高強度コンクリートや環境配慮型のコンクリートでは、セメントの一部をフライアッシュや高炉スラグ微粉末などの混和材に置き換えることがあります。この場合、セメントだけでなく混和材も含めた「結合材」に対する水の割合として、水結合材比(W/B)で管理するのが一般的です。考え方は水セメント比と同じで、小さいほど緻密で高強度になります。
もう一つ押さえておきたいのが、単位水量との関係です。水セメント比が同じでも、単位水量(1m³あたりの水の量)が多いと、単位セメント量も多くなります。その結果、水和熱や乾燥収縮が大きくなり、ひび割れが増えます。したがって、水セメント比だけでなく単位水量も低く抑えることが、ひび割れの少ない良質なコンクリートの条件です。ひび割れ対策はコンクリートひび割れ制御もあわせて参照してください。
なお、水セメント比の最大値や単位水量の上限は、建物の計画供用期間や環境条件によって変わります。実際の工事では、必ず設計図書や仕様書に記載された値に従ってください。
柴田工業の現場から
生コンが硬くて打ちにくいと、つい『水を足して』と言いたくなる場面があります。ただ、その一杯の水で水セメント比が変わり、図面で求められた強度や耐久性が損なわれます。鉄骨のスラブ打ちでも、受入れ時に納入書を見てスランプを確認する習慣をつけてください。