
ワーカビリティー
Workability
ワーカビリティーとは
ワーカビリティー(workability)は、まだ固まらないフレッシュコンクリートについて、運搬、打込み、締固め、仕上げといった作業のしやすさ、および材料分離への抵抗性を総合的に表す性質です。日本語では「施工性」や「作業性」と訳されます。ワーカビリティーが良いコンクリートは、型枠や鉄筋の隅々まで行き渡り、締固めやすく、骨材とペーストが分離しにくいため、硬化後に豆板(ジャンカ)や空隙などの欠陥が出にくくなります。
ワーカビリティーは1つの数値で表せる性質ではなく、いくつかの要素で説明されます。代表的なのは、軟らかさ・流動のしやすさを表す「コンシステンシー」、型枠に詰めやすく崩れにくい性質を表す「プラスティシティー(可塑性)」、材料分離しにくさを表す「材料分離抵抗性」です。これらを総合して、作業性を判断します。
スランプ試験とワーカビリティー
現場でコンシステンシーの目安として最も広く使われているのが、スランプ試験(JIS A 1101)です。高さ30cmのスランプコーンにコンクリートを詰めて引き上げ、下がった高さをスランプ値として測ります。スランプが大きいほど軟らかく、流動しやすいことを示します。ただしスランプは軟らかさの指標であって、ワーカビリティーそのものではありません。同じスランプでも、骨材の粒形や砂の量が違えば、締固めやすさや分離のしやすさは変わります。スランプ値と、ミキサ車から出てくる状態や打込み時の様子を併せて観察することが大切です。
流動性が非常に高い高流動コンクリートなどでは、スランプではなくスランプフロー(JIS A 1150)で評価します。
ワーカビリティーに影響する要因
ワーカビリティーは、主に次の要因で変わります。
- 単位水量:多いほど軟らかくなるが、増やしすぎると材料分離、ブリーディング、乾燥収縮の増大や強度低下を招く。JASS 5では、単位水量の上限を185kg/m³とするなど、水量の管理が重視されている。
- 細骨材率:砂の割合が小さすぎるとざらついて分離しやすく、大きすぎるとペースト量が多く必要になる。
- 骨材の粒形・粒度:砕石など角ばった骨材は、丸みのある骨材に比べて同じ水量でも流動しにくい。
- 混和剤:AE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤などを用いると、水量を増やさずに流動性を改善できる。
- 温度と経過時間:気温が高い、運搬時間が長いなどの条件では、スランプが低下(スランプロス)する。
これらは配合設計の段階で決まります。そのため施工側は、希望する施工性を事前に工場へ伝え、レディーミクストコンクリートの配合に反映してもらうことが基本です。現場に着いてから水を足して軟らかくする行為は、水セメント比を悪化させ、強度・耐久性を低下させるので行ってはいけません。
現場での考え方
鉄筋が密に配置された柱梁接合部や、鉄骨との取り合いで空間が狭い部位では、ワーカビリティーの良し悪しが充填性に直結します。流動性が不足すると、鉄骨のフランジ下面やデッキプレートの縁、柱脚周りなどに空隙が残りやすくなります。そこで、打込み時の振動締固めを適切に行い、必要に応じて、より流動性の高い配合を設計者・監督職員と協議して採用します。ワーカビリティーが不足したまま無理に打ち込むと、表面欠陥やひび割れ(ひび割れ制御)の原因となります。
「軟らかければ良い」ではない:ワーカビリティーの調整の落とし穴
現場では、軟らかいコンクリートは打ちやすいため、つい「もう少し軟らかく」と考えがちです。しかし、軟らかさを水で稼ぐと、強度低下、乾燥収縮ひび割れの増加、ブリーディングによる表面の脆弱化、打継ぎ部の弱点化などの問題が出ます。ワーカビリティーを高めるときは、単位水量を増やすのではなく、細骨材率の見直しや、AE減水剤・高性能AE減水剤の使用で対応するのが基本です。
反対に、硬すぎる配合も問題です。鉄筋やスタッド、鉄骨のスチフナなどが入り組んだ部位では、締固めが不足して充填不良が起こります。ポンプ圧送を行う場合は、配管内で閉塞しないだけの流動性も必要です。このため、ポンプ圧送性、打込み部位の状況、気温、運搬時間などを総合して、最適なスランプを決めます。
現場で確認する際は、スランプ値だけでなく、①ミキサ車から排出されるときの状態、②コテでならしたときの表面の仕上がり、③締固め時に骨材だけが沈む・水がにじむといった分離の兆候、などを観察します。泌水対策が必要な状況は、ワーカビリティーの崩れのサインでもあります。気になる兆候があれば、工場や監督職員にすぐ伝えましょう。
柴田工業の現場から
鉄骨まわりの狭い所に流し込むときは、コンクリートの流れ具合がそのまま仕上がりに出ます。打つ前に鉄骨側の納まりを生コンの担当者にも伝えておくと、配合の相談がしやすいです。