
建設業経理士
Construction Accounting Certification (Kensetsugyo Keirishi)
建設業経理士とは
建設業経理士は、建設業特有の会計(建設業会計)の知識と処理能力を認定する検定試験の合格者に与えられる資格です。建設業法施行規則に基づいて国土交通大臣の登録を受けた「登録経理試験」として実施されており、1級から4級までの級が設けられています。1級は建設業財務諸表・建設業原価計算・建設業財務分析の3科目、2級以下は科目を分けずに1つの試験として行われる、という構成です。受験資格に制限はなく、経理担当者だけでなく、現場の施工管理者や積算担当者が受ける例もあります。
業務を独占する資格ではなく、取得していなくても経理業務はできます。ただし、建設業会計は一般の商工業の簿記とは勘定科目も考え方も異なります。その違いを体系的に学べる点に、この資格の意味があります。
建設業会計の特徴
建設業は、受注してから完成・引渡しまでの期間が長く、1件ごとの請負金額も大きい業種です。そのため会計も、工事単位で原価を集計する考え方が中心になります。建設業法施行規則の様式で使われる代表的な勘定科目は次のとおりです。
- 完成工事高:完成した工事の請負金額に基づく売上
- 完成工事原価:完成した工事にかかった原価
- 未成工事支出金:まだ完成していない工事に支出した原価(製造業の仕掛品に近い科目)
- 未成工事受入金:未完成の工事について受け取った前受金や中間金
- 完成工事未収入金/工事未払金:工事代金の未収と未払
工事原価は、材料費・労務費・外注費・経費の4つに分けて集計するのが基本です。現場事務所の費用や現場管理者の給与などの工事間接費は、経費の中で扱われます。収益をどの時点で計上するかも重要な論点です。工事の進捗に応じて計上する方法と、完成引渡し時に計上する方法があり、会計基準の整備によって判断の枠組みが整理されています。
現場業務とのつながり
建設業経理士の知識は、現場の原価管理と直結します。実行予算を立て、出来高と支払いを突き合わせ、原価が予算を超えそうなら早めに手を打つ。この流れは、会計の数字を読めて初めて回ります。仮設工事原価管理や仮設費積算のように、損益に響きやすい仮設分野でも同様です。仮設は工事の後半に追加が出やすく、数字の把握が遅れると利益を圧迫するためです。
また、元請と下請の取引では、出来高に応じた請求や支払条件、仮払金の精算といった経理処理が日常的に発生します。建築施工管理技士が技術面で現場を支えるのに対し、建設業経理士はお金の面から工事の健全性を支える資格といえます。技術と経理の両方の言葉がわかる人がいると、現場と事務の意思疎通がずっと円滑になります。
経営事項審査(経審)との関係
公共工事を直接請け負おうとする建設業者は、建設業法に基づく経営事項審査を受けます。この審査は、経営規模、経営状況、技術力、社会性等といった項目を点数化して評価するものです。このうち社会性等の中の「経理の状況」に、経理の信頼性や、経理に携わる有資格者の数が関わっています。建設業経理士(1級・2級の登録経理試験合格者)は、この評価の対象に位置づけられています。そのため、公共工事を受注する会社にとっては、資格者を社内に置く実利があります。評価の対象となる級や加点のしくみ、有効期間などは制度改正で変わることがあるため、申請時には国土交通省の最新の案内を必ず確認してください。
学習の進め方
建設業会計は、簿記の基礎があると理解が早くなります。まず仕訳と財務諸表の基本をつかみ、そのうえで未成工事支出金や工事間接費の配賦といった建設業特有の論点を重ねていくのが一般的な進め方です。現場の方は、自分が関わっている工事の請負金額・実行予算・実績原価を会計の言葉に置き換えながら学ぶと、定着しやすくなります。
柴田工業の現場から
積算や調達をしていると、工事ごとの原価がどう集計され、どこで利益が決まるのかを意識する場面が多くあります。経理の言葉がわかると、現場の数字の見え方が変わります。技術職の人にもおすすめしたい資格です。