
インパクトレンチ
Impact Wrench
インパクトレンチとは
インパクトレンチとは、内部のハンマー機構が出力軸(アンビル)を連続して打撃することで、作業者への反力を抑えながら大きな締付けトルクを発生させるボルト・ナット締結用の工具です。動力には充電式、AC電源式、圧縮空気式(エア式)があり、電源やエアホースの取り回しが不要な充電式が現場では広く使われています。差込角には12.7mm(1/2インチ)や19.0mm(3/4インチ)などがあり、ボルトの呼び径に応じて機種を選びます。ソケットは打撃に耐えるインパクト専用のものを使います。
当社が手がける仮設鍛冶工事や鉄骨工事では、鉄骨部材の接合のほか、仮設材や足場まわりの金物の締結など、一日の中で何度も使う基本工具です。
鉄骨工事での使い方
鉄骨の現場接合で最も重要な用途は高力ボルトの締付けです。高力ボルトは、まず一次締めで部材同士を密着させ、その後に本締めを行います。一次締めが済んだボルトには、ボルト・ナット・座金・部材にまたがるマーキングを付けます。本締めの後にマークのずれを見れば、ナットが回ったか、ボルトが共回りしていないかを目視で確認できます。
ボルトの種類によって使う機器は異なります。トルシア形高力ボルトはピンテールが破断することで規定の締付けが完了するため、専用のせん断レンチを使います。一方、JIS形(六角)の高力ボルトでは、トルク管理法やナット回転法で本締めを行います。ナット回転法では、一次締め後に標準でナットを120度(±30度)回転させる方法が使われ、その際にインパクトレンチを使うことがあります。いずれも設計図書や特記仕様書、施工計画書で定めた方法に従うことが前提です。
締付けの順序も大切です。ボルト群は中央から外側へ向かって締めるのが基本で、部材のすき間を詰めながら均一に締め付けます。仮ボルトで組み立てた段階から仮ボルトを適切な本数だけ使い、本締めに移る前に部材の位置と建て入れの状態を確認しておきます。
管理と安全のポイント
インパクトレンチは打撃式のため、同じ機種でもバッテリー残量、エア圧、ホースの長さ、ソケットの摩耗によって出力が変わります。トルクを管理して締める場合は、使用する機器の締付け性能を作業前に確認し、機器の出力だけに頼らず、マーキングのずれやナット回転量などで結果を確認する習慣が必要です。詳しくはトルク管理の項目も参照してください。
安全面では、高所での工具落下が重大な災害につながります。落下防止ひもで工具を身体や構造物に繋ぎ、ソケットが外れないよう確認します。打撃音が大きいため耳栓などの保護具も有効です。作業足場の手すりは手すり先行工法で先に設けておきます。作業前のKY活動で、使用する工具、ボルトの種類、足場の状況を全員で共有しておくと、安全管理の面でも効果的です。
打撃式の原理と、締付け結果のばらつき
インパクトレンチは、モーターで回したハンマーがアンビルを叩く動きを繰り返します。ボルトの抵抗が小さい間はほぼ連続回転で、ナットが着座して抵抗が大きくなると打撃が始まります。打撃の1回ごとにわずかな角度とトルクが加わるため、作業者が強く押さえつけなくても大きなトルクが得られます。
この仕組みには注意点もあります。打撃を続けるほどトルクは上昇するため、同じボルトでも打撃時間によって締付け結果が変わります。バッテリーの電圧低下やエア圧の不足でも打撃力は変化します。さらに、座面に汚れや錆、塗膜があると、同じトルクでも導入される張力が変わります。過締めはボルトの降伏やねじ山の損傷につながり、締付け不足はすべり耐力の不足を招きます。
そのため鉄骨の接合部では、一次締めで部材を密着させ、本締めでは定められた方法と確認手段(マーキング、ピンテール破断、回転量の確認など)を組み合わせて管理します。工具の性能に頼りきらず、手順と記録で品質を担保することが基本です。
柴田工業の現場から
インパクトレンチは使い慣れているぶん、ついソケットの摩耗や電池残量の確認を忘れがちです。高所で落とすと取り返しがつかないので、落下防止ひもは必ず付けてから作業に入るようにしています。