
ワイヤロープ
Wire Rope
ワイヤロープとは
ワイヤロープは、細い鋼線(素線)を撚り合わせてストランドをつくり、そのストランドを心綱のまわりに撚り合わせて構成したロープです。高い引張強度と、柔軟性、耐久性を併せ持ち、クレーンの巻上げ、荷をつるための玉掛け、荷の固定、ウインチ牽引など、建設現場の幅広い場面で使われています。規格としてはJIS G 3525(ワイヤロープ)が定められています。
構成は「ストランド数×1本のストランドの素線数」で表します。例えば「6×24」「6×Fi(25)」などの表記があり、素線が細いほど柔軟ですが、摩耗には弱くなります。心綱には、繊維心と鋼心があり、鋼心は強度が高く、潰れにくいのが特徴です。撚り方には、普通より(ストランドとロープの撚り方向が逆)とラングより(同方向)があります。普通よりは形崩れしにくく、ラングよりは耐摩耗性に優れますが、ねじれや回転が生じやすいため、取扱いに注意が必要です。
現場での使い方と安全の基本
鉄骨建方や仮設工事では、クレーンで鋼材や仮設材をつり上げるために、玉掛け用のワイヤロープ(スリング)が多用されます。玉掛けの作業は玉掛け技能を持つ人が行い、つり荷の重さと重心、ロープの角度、つり具の状態を確認することが基本です。
玉掛け用ワイヤロープは、クレーン等安全規則で、安全係数(切断荷重を、かかる最大荷重で割った値)が6以上と定められています。また、次のようなワイヤロープは使用が禁じられています。
- 1よりの間で素線の10%以上が切断しているもの
- 直径の減少が公称径の7%を超えるもの
- キンク(折れ癖)したもの
- 著しい形崩れや腐食があるもの
つり角度にも注意が必要です。2本づりでは、つり角度が大きくなるほど、1本にかかる張力が増えます。つり角度が60度のとき、1本には荷重の半分の約1.15倍がかかり、90度で約1.41倍、120度では2倍になります。一般にはつり角度を60度以内にし、極端に広げないことが望ましいとされています。荷の重心の位置や、ロープの掛け方で荷が傾かないかも、玉掛け前に確認します。
点検・保管・端末処理
ワイヤロープは使用前の点検が重要です。素線の切れ、摩耗、キンク、腐食、潰れ、端末の緩みなどを確認し、異常があれば直ちに使用を中止します。鋭角な角のある鋼材(H形鋼の角など)をつる場合は、当て物(保護材)を入れて、ロープの損傷と荷の傷を防ぎます。
保管は、湿気と油汚れのない場所で行い、地面に直に置かず、巻癖が付かないようにします。また、端末の加工にはアイスプライス、圧縮止め(スリーブ)、クリップ止めなどがあります。いずれも端末加工によって強度が低下するため、ロープの定格を決める際は、加工後の強度で考えます。クリップ止めは、ロープ径に応じた個数と間隔で正しい向きに取り付けることが必要です。
建方の際の建て入れ直しでは、ワイヤロープとターンバックルを組み合わせて柱の倒れを調整します。ここでも、使用するワイヤの径、取付け金具の強度、アンカー側の耐力を確認しておくことが、安全上重要です。
つり角度と張力の関係を数字で押さえる
玉掛けで事故につながりやすいのは、「ロープの強度は十分にあるはず」という思い込みです。2本づりの場合、1本あたりの張力は、荷重Wを2で割り、そこにつり角度に応じた係数を掛けて求めます。つり角度(2本のロープがなす角)をθとすると、1本の張力は、W÷2÷cos(θ/2)です。θが60度なら約1.15、90度なら約1.41、120度なら2.0を、W÷2に掛けた値になります。つまり、つり角度が120度のときは、ロープ1本に荷重と同じ大きさの張力が掛かるということです。
さらに、玉掛け用具の選定で見落としやすいのが、シャックルやフックなど金具側の強度です。ロープが耐えても金具の許容荷重が不足すれば意味がありません。また、荷が鋭い角を持つ場合、ロープは角で曲げられて局所的に傷みます。急な曲げで強度が低下するため、当て物は必須です。
当社が行う仮設鍛冶工事では、揚重材吊具設計のように、つり具そのものを設計・製作する場面もあります。つり耳の位置や強度、クランプの使い方も含めて、ロープ、金具、つり耳を一つの系統として確認することが重要です。点検記録を残し、異常のあるロープは現場に置かずに廃棄するルールを徹底することが、事故防止の基本になります。作業前のKY活動で、つり荷の重量と使用ロープの確認を習慣にしておきましょう。
柴田工業の現場から
ワイヤは見た目で大丈夫そうでも、素線の切れや角での痛みが隠れていることがあります。つり角度が開くと張力が一気に増えるので、玉掛けの前に角度と当て物を必ず確認するようにしています。