鉄骨増厚設計に関する建設現場イメージ
Steel Section Augmentation Design

鉄骨増厚設計

Steel Section Augmentation Design

工事の種類
てっこうぞうこうせっけい

鉄骨増厚設計の意義

鉄骨構造物の設計において、局部的に高い応力が集中する箇所(例:柱脚、大梁受け部、ブレース接合部)では、通常の部材断面では耐力不足となることがあります。このような場合に、応力が集中する局部領域に対して、厚板や追加プレートを溶接により増設し、耐力を向上させる手法が、鉄骨増厚設計です。

増厚設計は、構造体全体の部材サイズを大きくするよりも、局部的・経済的な対応が可能であるため、コスト効率性と施工性のバランスを取った設計手法として、広く用いられています。

増厚プレート配置の設計上の配慮

増厚設計では、単に厚さを増すだけでなく、以下のような設計上の配慮が必要です:

  • 応力フロー:増厚プレートの端部で応力が急激に変化しないよう、テーパ形状や段階的な厚さ変化を採用
  • 溶接設計:増厚プレートと既存部材の溶接が完全に融合するよう、溶接仕様設計を厳格に定める
  • 局部座屈対策:増厚プレートの幅厚比が大きくなりすぎないよう、補剛リブや幅方向の制約を設定
  • 組立・溶接工数鉄骨製作図にて、増厚プレートの取付位置、溶接方法、検査タイミングを明確に指示

これらの要素は、施工図の段階で、製作工場と設計者、および施工者の間で十分に協議される必要があります。

製作工場での加工と品質確保

鉄骨増厚部の加工は、鉄骨製作工場での重要な工程です。増厚プレートの寸法加工、面取り、および基部材との接合面の清掃(ブラスト処理)などが、精密に実行される必要があります。

特に重要なのが、溶接前後の熱処理です。増厚部材の溶接では、局部的な高温領域が生じるため、溶接施工管理により、入熱量と冷却条件が厳密に管理されます。また、溶接完了後は、UT検査溶接傷の把握により、溶接部の内部欠陥がないか確認されます。

現場施工と建て方管理への影響

増厚設計が採用された部材は、通常の部材よりも重量が増すため、クレーン運搬・建て方の安全管理に際して、吊り具の選定やつり位置の設定が変わります。

また、建て方現場での建て方精度管理も、増厚部の存在により複雑になります。例えば、梁受け部が増厚されている場合、その厚さが建て入れ時の隙間に影響し、仮ボルト合い仕組み下地の設定が変わることがあります。

設計から施工までの検証プロセス

鉄骨増厚設計の妥当性を確保するため、以下のような検証プロセスが実施されます:

  • FEM解析による耐力確認:増厚プレートを含めた部分モデルにて、応力分布と安全率を確認
  • 施工図検証施工図検証の段階で、増厚部の加工・溶接の実現性を確認
  • 試験施工:初めて採用する増厚形式については、溶接実験を実施し、耐力と施工性を実証
  • 検査基準の設定品質管理の一環として、増厚部の被り厚さ管理やUT検査基準を厳格に定める

増厚部と周辺部の応力移行メカニズム

増厚プレートが設置された部位では、端部における応力の急激な変化が問題となり得ます。例えば、H形鋼の梁受け部に厚板ボルトプレートを溶接する場合、プレート端部での応力集中係数(Kt)が2.0~3.0程度に達することもあります。

これを軽減するため、設計では以下の工夫が採用されます:①テーパ形状によるなめらかな応力移行、②プレート端部にスロープを設ける、③複数段階の厚さを採用。また、溶接仕様設計の段階で、増厚プレート端部から周辺部に至る溶接のビード形状を工夫し、加工硬化を避けるなどの対策が実施されます。

さらに、疲労荷重を受ける構造の場合、増厚部の端部が疲労亀裂の起点となる可能性があるため、UT検査の重点対象としてマークされ、定期的な点検計画の中に組み込まれます。

設計原則
局部応力集中部に対し、最小限の増厚で耐力向上を図る経済的手法
応力移行
増厚部端部での応力集中を軽減するため、テーパ形状やスロープ設計を採用
品質検証
FEM解析、施工図検証、試験溶接、UT検査による多段階の確認が必須

柴田工業の現場から

石堂 洋三
石堂 洋三 現場管理・積算・調達

増厚設計は、精度と品質が要求される工事です。製作図面の段階で、溶接本数や加工手数が増えるため、製作工期や原価に大きく影響する。設計者、工場、現場が一体となって、実現性と品質のバランスを取ることが大切ですね。

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