
鋼材製作下地
Steel Fabrication Base Preparation
概要
鋼材製作下地とは、工場での本格的な溶接・ボルト加工・塗装などの各製作工程に先立ち、鋼材表面の不要物を除去し、最適な施工環境を整えるプロセスの総称です。新しい鋼板には工場の防錆油や製造時の黒皮(酸化層)が付着しており、この状態では溶接品質の確保やペイント密着性が損なわれます。また、既存の鋼構造物の補強工事では、旧塗装やさびを完全に除去することが品質保証の必須要件となります。
柴田工業では、鋼材製作図に基づいて各部材の製作を開始する前に、下地処理専門チームが以下の作業を実施し、その後の製作工程がスムーズに進むよう環境を整えます。
下地処理の主要な作業内容
鋼材製作下地処理は、以下の複数のステップから構成されます:
- 防錆油・グリース除去:新規鋼材に付着した工場の防錆油を、溶剤洗浄やブラスト処理で除去します。この工程を省くと、後の溶接でポロシティ(気孔)が発生しやすくなります
- 黒皮(スケール)除去:鋼材の圧延時に形成される酸化層(黒皮)を、ショットブラスト・グリットブラストで機械的に除去します
- さび・旧塗装除去:既設部材や長期保管された部材のさびや旧塗装を、ワイヤブラシ・ディスクサンダー・ブラストで除去します。JIS K 5308で規定される「素地調整」を確実に実施します
- 寸法確認・マーキング:下地処理と並行して、各部材の寸法精度を確認し、加工位置を墨出し・マーキングします
- 乾燥・保管:処理後の部材は湿度管理された環境で保管し、再錆化を防ぎます
下地処理方法の選定基準
最適な下地処理方法は、以下の要因に基づいて選定されます。
1. 鋼材の種類・状態:新規材か既設材か、さびの程度、油分の有無によって異なります。新規材ならショットブラスト、既設材でさび深い場合はグリットブラストが有効です。
2. 後工程の要求精度:溶接品質を重視する部位ではより厳密な油分除去が必要です。一方、単純な切断・穿孔が対象なら簡易なワイヤブラシでも足りる場合があります。
3. 塗装仕様:その後の防錆塗装が長期耐久性を必要とする場合(海岸地域など)は、ISO 8501-1で定義される「Sa 2.5(ほぼ完全なブラスト処理)」レベルの下地が要求されます。
4. 環境・コスト制約:ブラスト処理は粉塵と騒音が大きいため、都市部では限定的になります。この場合は化学処理(リン酸塩処理)や局所的なディスクサンダーによる研磨で代替する場合もあります。
下地処理後の品質確認
処理完了後、検査員が以下の項目を確認します:①表面粗さ(ISO 3274に基づく粗さプロファイル)、②油分・ほこりの残存状況(鉛筆テストで確認)、③さび止め塗料の塗布有無(処理直後の再錆化防止)。
特に溶接部材の場合、下地不良がポロシティを誘発し、後の非破壊検査(超音波探傷検査など)で不適合と判定される可能性があるため、厳密な検査が不可欠です。処理結果はチェックシートに記録し、施工管理日誌の一部として保管されます。
ブラスト処理と化学処理の選択基準
鋼材製作下地処理の大半は、ショットブラストまたはグリットブラストなどの機械的ブラスト処理で実施されます。これらは短時間で大面積を処理でき、表面粗さも調整可能という利点があります。一方、粉塵と騒音が課題であり、都市部の工場では排気・騒音対策が必須になります。
これに対し、リン酸塩処理などの化学処理は、環境負荷が小さく、屋内でも実施可能ですが、処理時間が長く、表面粗さの制御が難しい欠点があります。近年は、「ケミカルブラスト」(水+研磨材の微粒子を圧力で噴射)という中間的な方法も登場し、選択肢が広がっています。
柴田工業では、部材の用途と工場条件に応じて最適な方法を選択し、品質と環境のバランスを取っています。特に、鋼材組立管理図で指示された部材の搬入予定に合わせ、処理スケジュールを組むことで、工場内の在庫と処理待機時間を最小限に抑えています。
柴田工業の現場から
下地処理は見た目で評価されにくい作業ですが、これがしっかりしていないと後の溶接や塗装で必ず問題が出ます。工場での品質確保が、現場トラブルを大幅に減らします。