
スクレーパー
Scraper
スクレーパーとは
スクレーパー(scraper)は、地面を薄く削り取り、そのまま運んで、指定の場所に敷きならすまでを一台で行う土工機械です。大規模な造成工事や道路盛土、空港、ダムなど、広い範囲で大量の土を動かす現場で使われてきました。ブルドーザーが土を押し、ダンプトラックが土を運ぶのに対し、スクレーパーは掘削・積込み・運搬・撒き出しの工程を一台でこなす点が特徴です。
機械の基本構造は、土を溜めるボウル(箱)、ボウル前下部にある刃(カッティングエッジ)、前面を開閉するエプロン、土を押し出すイジェクタからなります。ボウルを牽引または搭載する走行部には、トラクタで牽引する牽引式と、運転席を備えた一体の自走式(モータースクレーパー)があります。
作業の流れ
スクレーパーの作業は、次の四段階で進みます。
- 掘削・積込み:ボウルを下げ、エプロンを開けて走行しながら刃で土を薄く削り取り、ボウルに押し込む
- 運搬:エプロンを閉じ、ボウルを上げて盛土の場所まで走る
- 敷きならし:エプロンを開け、イジェクタで土を押し出しながら走行し、一定の厚さで撒き出す
- 戻り走行:空の状態で掘削場所へ戻る
掘削と撒き出しを走行しながら行うため、運搬距離が中距離で連続した作業ができる現場では効率が高くなります。撒き出しの厚さが比較的そろうため、あとの転圧作業(タイヤローラーなど)にもつなげやすくなります。
適する現場と限界
適するのは、比較的軟らかい砂質土や粘性土を広い範囲で運ぶ現場です。岩や大きな転石の多い地盤、硬く締まった土では、事前にリッパなどでほぐす必要があります。また、走行路が軟弱だとタイヤが沈んで能率が落ちるため、走行路の整備や排水が欠かせません。
近年は、油圧ショベルとダンプトラック(ダンプトラック)を組み合わせた施工が主流で、スクレーパーが使われる場面は大規模造成などに限られています。都市部の建築現場で目にする機会はほとんどありません。
法令上の区分と安全
スクレーパーは、労働安全衛生法施行令の別表第7にある整地・運搬・積込み用機械に区分され、ブルドーザーやモーターグレーダーなどと並ぶ車両系建設機械です。機体重量3t以上のものの運転には技能講習の修了が必要で、事業者には作業計画の作成と作業指揮者・誘導者の配置が求められます。
安全面では次の点に注意します。
- 運転席からの死角が大きいため、周囲の作業員とは接近させず、立入禁止区域と誘導者を設ける
- 傾斜地での横転や、軟弱地盤での沈み込みを防ぐため、走行路の勾配・路肩を事前に確認する
- ボウルを上げた状態の下に入らない。点検・修理時は必ず降下防止の措置を取る
鉄骨や仮設の会社が直接運転することはありませんが、敷地造成の後に建方用の重機足場を作る際には、盛土の締固め状況が地耐力に直結します。造成状況は元請を通じて確認しておきましょう。
運搬距離で見る土工機械の使い分け
土工事の機械選定では、運搬距離が大きな判断材料です。ごく短い距離ならブルドーザーによる押土、近距離から中距離の運搬ではスクレーパー、距離が長くなるほどダンプトラックが有利になる、というのが一般的な考え方です。スクレーパーは一台で掘削から撒き出しまでこなせる反面、機械が高額で、走行路の維持にも手間がかかります。そのため、掘削場所と盛土場所が連続した大規模な現場でなければ、採算が合いにくくなります。
現在の都市部の工事では、敷地が狭く掘削土を場外へ搬出することが多いため、油圧ショベルとダンプトラックの組合せが中心です。スクレーパーが選ばれるのは、造成の規模が大きく、場内で土を動かすことが主体の現場です。
具体的な効率は土質、勾配、走行路の状態で大きく変わるため、数値は元請や土工事業者が現場条件から算定します。仮設・鉄骨側としては、こうした大型機械が走る範囲と仮設物の配置が干渉しないよう、工程管理の会議で動線を共有しておくことが大切です。
柴田工業の現場から
スクレーパーは今や大規模造成のイメージですが、重機の使い分けの考え方は積算や調達にも通じます。運搬距離と土質で機械を選ぶ発想は、私たちが搬入計画を組むときの基本と同じです。