すべり係数に関する建設現場イメージ
Slip Coefficient

すべり係数

Slip Coefficient

工事の種類
すべりけいすう

すべり係数の意味

摩擦接合では、高力ボルトにより圧接された部材間の摩擦抵抗がせん断力を支える主要な要素となります。すべり係数は、この摩擦抵抗の大きさを表す無次元の指標で、ボルト軸力と部材の表面状態に左右されます。

すべり係数μが大きいほど、同じボルト軸力でより大きなせん断力を伝達できることを意味します。構造設計では、このすべり係数の値に基づいて摩擦接合の許容応力度を算定するため、現場での確実な値確保が構造安全性に直結します。

基準値と種類

公共建築工事標準仕様書およびJASS 6では、以下のすべり係数基準値が規定されています:

一般的な鉄骨(JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材)
・表面ショットブラスト処理:μ ≥ 0.50
・赤さび状態:μ ≥ 0.45
・軽くサンダー処理:μ ≥ 0.40

溶融亜鉛めっき鋼材
溶融亜鉛めっき面:μ ≥ 0.40
・ショットブラスト後めっき:μ ≥ 0.50

これらの値は、ボルト軸力が確実に導入された状態を前提としているため、ナット回転法トルク管理法による正確な締付けが必須です。

現場での確認方法

すべり係数は、試験片を用いた試験により確認されます。一般的には以下の方法が採用されます:

すべり試験(Slip Test)
実際の部材と同じ表面処理・材質を持つ試験片を使用し、高力ボルトで圧接した後、徐々に荷重を加えてすべりが生じる荷重を測定します。この時のすべり係数=すべり荷重÷ボルト軸力として算出されます。

工事着工前に、鋼構造製作工場がこの試験を実施し、設計値を満たしていることを確認します。また、現場での表面状態変化(雨水接触等)がある場合は、追加試験を行うことも重要です。

施工品質確保の重要性

すべり係数は設計段階で仮定した値であり、現場での表面処理・保管・施工条件により変動するリスクがあります。柴田工業のような鉄骨工事業者は、施工管理技士を配置して以下の管理を実施します:

・部材表面の汚れ・油分・水分の除去確認
・ボルト・ナット・座金の清浄性確認
・締付け後の部材間隙の確認
・定期的なすべり試験の実施

すべり係数と構造安全性の関係

高層建築の鉄骨構造では、地震時に大きなせん断力が接合部に作用します。この時、摩擦接合が採用されている場合、すべり係数の低下は直接的に構造の耐力低下につながります。例えば、設計時に0.45と仮定していたすべり係数が、現場で0.35に低下すれば、接合部の耐力は22%減少することになります。

このため、国際的な鋼構造設計基準(例:AISC)でも、すべり係数の管理は極めて重要な項目として位置づけられています。国内では、公共建築工事標準仕様書により、試験による実証値の確認が強制されている背景がここにあります。

また、環境条件の変化も無視できません。塩害地域での塩分付着、工業地帯での排気ガス付着、長期間の雨風への露出など、竣工後の時間経過に伴うすべり係数変化も考慮した設計・施工が求められます。

基準値
一般鋼材0.45以上、溶融亜鉛めっき0.4以上
確認方法
工事前にすべり試験を実施して実測値を確認
品質管理
表面処理・ボルト軸力・保管条件を厳格に管理

柴田工業の現場から

上沢 直二
上沢 直二 事務・現場兼務

すべり係数の試験は、工場出荷前に必ず実施します。現場でも雨対策や汚れ除去をしっかり行わないと、せっかくの試験値も意味がなくなる。細部の管理が大事。

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