
オールテレーンクレーン
All Terrain Crane
オールテレーンクレーンとは
オールテレーンクレーン(All Terrain Crane、ATと略される)は、「全地形対応型」と呼ばれる移動式クレーンです。多軸の車両に伸縮ブームを搭載し、公道を比較的速い速度で自走できる点と、不整地や軟弱な路面でも走行できる点を兼ね備えています。小型のラフテレーンクレーンが現場内の取り回しに優れ、トラッククレーンが公道走行に優れるのに対し、両方の利点を併せ持つ位置づけです。
一般的に、複数の車軸を持ち、全輪操舵やカニ走行などで小回りを利かせ、油気圧式のサスペンションで路面に追従します。つり上げ能力は機種によって幅があり、数十tクラスから数百tクラスの大型機まで揃っています。法令上は他の移動式クレーンと同様、つり上げ荷重に応じた運転資格や、クレーン等安全規則の各規定が適用されます。
特徴と使いどころ
最大の長所は機動性です。公道を自走して現場に入り、短時間で組立てと撤去ができるため、複数の現場を転々とする揚重や、短い作業時間での搬入に向いています。長いブームと大きな定格荷重を持つ機種が多く、大規模な鉄骨の建方、プラント機器や橋梁部材のつり込み、風力発電設備の設置などで使われます。
一方で、大型機ほど車両重量と接地圧が大きく、アウトリガーの張出し幅やジャッキ反力も大きくなります。このため、設置箇所の地盤支持力を確認し、鉄板などで荷重を分散させる養生が重要です。大型機は、公道走行時の車両寸法・重量が車両制限令の制限を超える場合があり、その場合は特殊車両通行許可の手続きが必要になることがあります。また、ブームやカウンターウエイトを分割して別車両で運搬し、現場で組立てる機種もあります。事前に建設ロジスティクス管理の面から、搬入ルートと組立てスペースを検討します。
計画と安全管理
計画段階では、つり荷の質量、作業半径、ブーム長さ、設置位置を決め、定格総荷重表で余裕を持った作業ができるかを確認します。これは建方計画書や仮設クレーン基礎設計の内容と整合させます。特に仮設の足場や乗入れ構台、埋設物の上にアウトリガーを置く場合は、支持力の確認が必須です。
作業中は、クレーン操作安全管理に沿って、合図者の配置、立入禁止区画の設定、強風時の作業中止基準の運用などを徹底します。過負荷防止装置などの安全装置が備わっていても、それに頼った運転は禁物です。クレーン荷重確認を行い、玉掛けの資格者が適切な用具で荷を掛けることが、事故防止の基本です。
ラフテレーンクレーンとの使い分け
現場でよく比較されるのが、ラフテレーンクレーンです。ラフテレーンは車体が短くて幅も比較的狭く、1つの運転席で走行とクレーン操作を行う構造のものが一般的で、狭い現場や不整地での小回りに強みがあります。一方、オールテレーンは大型で、より大きなつり上げ能力と長いブームを持ち、公道走行性能にも優れます。ただし、車体が大きいため、狭小地では設置に必要な面積が確保できないことがあります。つり荷の重量が数十t程度までで、現場が狭い場合はラフテレーン、大重量・高揚程・遠距離の移動を伴う場合はオールテレーン、というように、荷重・作業半径・敷地条件・搬入経路を総合して機種を決めます。
柴田工業の現場から
大型のクレーンは、機種の手配だけでなく搬入経路と組立てスペースの確保が肝心です。調達の段階で、早めに現場の条件を確認しています。