契約不適合責任に関する建設現場イメージ
Liability for Non-conformity with the Contract

契約不適合責任

Liability for Non-conformity with the Contract

管理の5本柱
けいやくふてきごうせきにん

契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、請負人が引き渡した工事の目的物が、種類・品質・数量などについて契約の内容に適合しない場合に、請負人が負う責任のことです。2020年4月1日に施行された改正民法によって、それまでの「瑕疵担保責任」に代わって導入されました。

旧民法では「隠れた瑕疵」があるかどうかが問題とされましたが、改正後は「契約の内容に適合しているか」が基準になります。つまり、設計図書や特記仕様書、見積条件などで合意した内容と、実際に引き渡した目的物が合っているかどうかで判断されます。契約書面の書き方や、図書の整備が従来以上に重要になったといえます。

注文者が請求できること

目的物が契約に適合しない場合、注文者は次のような請求ができます。請負契約には、売買の規定が準用されます(民法559条)。

  • 追完請求:補修、代替物の引渡し、不足分の引渡しなど、契約に適合させるよう求める
  • 代金(報酬)減額請求:相当の期間を定めて追完を催告しても追完されない場合などに、不適合の程度に応じて減額を求める
  • 損害賠償請求:不適合によって生じた損害の賠償を求める(請負人に帰責事由がある場合)
  • 契約の解除:不適合が重大で契約の目的を達成できない場合などに認められる

期間の制限も重要です。注文者が不適合を知った時から1年以内に、その旨を請負人に通知しなければ、原則として請求ができなくなります(民法637条)。ただし、請負人が引渡し時にその不適合を知っていた、あるいは重大な過失で知らなかった場合は、この制限は適用されません。実際の工事では、公共工事標準請負契約約款や民間の約款で、引渡し後の責任期間が別に定められていることが多いため、契約ごとに確認します。

また、新築住宅については、住宅の品質確保の促進等に関する法律により、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分について、引渡しから10年間の責任が定められています。

鉄骨・仮設工事での実務と備え

鉄骨工事や仮設鍛冶工事で不適合が問題となりやすいのは、次のような項目です。

  • 溶接の欠陥(ビードの不良、割れ、UT検査での不合格など)
  • 高力ボルトの締付け不足(トルク管理の不備)
  • 建入れ精度や寸法の不適合
  • 塗装や耐火被覆の厚さ・範囲の不足
  • 使用材料の取り違え、規格の違い

こうしたリスクを減らす最善の方法は、施工中の記録と検査を確実に残すことです。品質管理の計画に沿って、中間検査の記録、材料のミルシート、施工記録書を整理しておけば、不適合の指摘を受けた際に、契約どおりに施工したことを客観的に示せます。下請として工事に入る場合、元請が発注者に対して負う責任が、下請との契約を通じて自社に及ぶことも念頭に置いておく必要があります。

瑕疵担保責任との違いと実務での注意点

旧民法の瑕疵担保責任では、原則として注文者の請求は「瑕疵の修補」「損害賠償」「契約解除」でした。改正後は追完請求や代金減額請求が明確に位置付けられ、注文者が選べる手段が広がっています。また、「隠れた瑕疵」という要件がなくなったため、発注時点で分かっていた不具合であっても、契約内容に適合していなければ責任の対象になりえます。

実務では、契約書や仕様書で「何を満たせば適合とするか」を具体化しておくことが大切です。たとえば、仕上げの許容精度や、溶接の検査基準・合格基準、塗装の仕様などを事前に取り決めておけば、後の認識のずれを減らせます。仕様が曖昧なままだと、解釈の違いが不適合の争いになります。

もう一つ重要なのは、元請と下請の間の責任期間の整合です。元請が発注者に負う責任期間より、下請への責任期間を短くしていると、後で責任の押し付け合いが起きかねません。契約時に責任期間と対象範囲を確認し、不明な点は書面で確認する習慣が自社を守ります。個別の契約解釈は事案によって異なるため、判断に迷う場合は弁護士など専門家に相談してください。

法的根拠
2020年4月施行の改正民法で、瑕疵担保責任に代わり導入。請負契約には売買の規定が準用される
請求できる内容
追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除。不適合を知った時から1年以内の通知が原則
実務の備え
設計図書・仕様の明確化と、検査記録・施工記録の整備が最大の防御になる

柴田工業の現場から

石堂 洋三
石堂 洋三 現場管理・積算・調達

不適合の指摘を受けたとき、最後に頼りになるのは施工記録と検査写真です。見積の段階で仕様を詰めておくことも、積算担当として大切にしています。契約条件の読み込みは、後から効いてきます。

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