
あばら筋
Stirrup
あばら筋とは
あばら筋(stirrup)は、鉄筋コンクリート造の梁で、主筋を取り囲むように一定間隔で配置される補強筋です。名前は、胸の「あばら骨」のように主筋を囲む姿に由来するといわれます。梁には曲げモーメントとともにせん断力が働き、せん断力が大きくなるとコンクリートに斜めのひび割れ(せん断ひび割れ)が生じます。あばら筋はそのひび割れが広がるのを抑え、梁が脆く壊れるのを防ぎます。設計上は「せん断補強筋」の一種で、考え方はせん断補強設計やせん断強度設計で扱われます。
柱で同じ役割をする鉄筋は帯筋(フープ)といいます。梁のものはあばら筋、柱のものは帯筋と、部位で呼び分けます。
あばら筋の働きと形状
あばら筋には、主に次の3つの働きがあります。
- せん断力への抵抗:斜めひび割れを横切って力を負担する。
- 主筋の位置保持:配筋・打設中に主筋が動かないよう保持し、組立てを安定させる。
- コア部分の拘束:コンクリートを内側に閉じ込め、変形性能(粘り)を高める。
形状は、閉鎖形(四角に一周して端部を重ねる)が基本です。端部には、コンクリートから抜けないよう135°などのフックを付けます。その角度・余長は鉄筋フックや設計図書の記載に従います。大きな梁では、中子筋(副あばら筋)を加えて、幅方向の中央部も拘束することがあります。溶接閉鎖形のものを工場加工品として使うこともあります。
設計の目安として、日本建築学会の鉄筋コンクリート構造計算規準では、梁のあばら筋比を0.2%以上とすることが示されています。実際の径・間隔は、梁端部は密に、中央部はやや粗くなるなど、部位ごとに構造図で指定されます。
施工と配筋検査のポイント
あばら筋は径が細く、数が多いため、施工ミスが目立たず見落とされがちです。検査では次の点を確認します。
- 径・本数・ピッチが構造図どおりか(梁端部と中央部の違いに注意)
- フックの角度・余長・向きが適切か(フックの位置を左右・上下交互にするなどの指示を含む)
- 主筋との結束が確実で、打設中にずれないか
- かぶり厚さが確保されているか
かぶり厚さは、建築基準法施行令第79条で、耐力壁以外の壁・床は2cm以上、耐力壁・柱・梁は3cm以上、直接土に接する壁・柱・床・梁・布基礎の立上り部分は4cm以上、基礎は(捨コンクリート部分を除いて)6cm以上と定められています。重要な点は、かぶり厚さがあばら筋の外側から測られることが多いということです。あばら筋が外側に出ていると、主筋のかぶりは見た目よりも小さくなります。スペーサーの配置や種類を適切にし、かぶり厚さ管理と併せて確認することが重要です。
鉄骨工事との関係
鉄骨と鉄筋コンクリートが取り合う場所(SRC造、鉄骨柱脚の根巻き部、RC梁と鉄骨梁の接合部など)では、鉄骨のフランジやリブがあばら筋の配置と干渉することがあります。無理にあばら筋を省略・移動すると、せん断補強の性能が損なわれます。鉄骨の貫通孔、スチフナ、スタッドの位置を鉄筋の位置と照合し、施工図の段階で調整しておくことが、現場での手戻りを防ぎます。
あばら筋が足りないと何が起こるか:せん断破壊と配筋の考え方
梁の破壊には、曲げ破壊とせん断破壊があります。曲げ破壊は主筋が降伏してから徐々に変形が進むため、比較的粘りのある壊れ方になります。一方、せん断破壊は斜めひび割れが急に開いて耐力が低下する、脆い壊れ方です。耐震設計では、せん断破壊が曲げ降伏より先に起こらないようにする考え方が基本になります。そのため、梁端部のように地震時に大きな力を受ける部分のあばら筋は、間隔を密にします。
現場で注意したいのは、あばら筋の「抜け」と「ピッチの乱れ」です。主筋の本数が多い梁や、設備スリーブが入る梁では、あばら筋を所定の位置に置けず、ピッチが粗くなったり、部分的に省略されたりすることがあります。スリーブ周りの補強は構造図や標準図に従い、勝手に変えてはいけません。また、段取りの都合で結束を省くと、コンクリートの打込み時にあばら筋が移動して間隔が崩れます。配筋検査の前に自主検査を行い、写真記録を残しておくと、後の確認にも役立ちます。
柴田工業の現場から
あばら筋は一本ずつは細いのですが、数が多いので加工数量と搬入のタイミングを読み違えると工程にひびきます。検査前に数とピッチを自分の目で数えるようにしています。