
定着
Anchorage (Development of Reinforcement)
定着とは
定着(anchorage)とは、鉄筋コンクリート造(RC造)で、鉄筋がコンクリートから抜け出さずに力を伝えられるよう、必要な長さと形状でコンクリートの中に埋め込むことです。たとえば梁の主筋を柱の中へ、柱の主筋を基礎や上階の梁へ、スラブ筋を梁へ、といった部分で必要になります。鉄筋は、周囲のコンクリートとの付着、端部のフック(折曲げ)、端部に取り付ける定着金物などによって力をコンクリートに伝えます。
よく混同されるのが「継手」です。継手は鉄筋どうしをつないで力を伝える方法で、重ね継手、ガス圧接継手、機械式継手などがあります。一方、定着は鉄筋とコンクリートの間で力をやりとりする仕組みです。両者は別の概念ですが、柱梁接合部のように近い場所で同時に問題になります。
定着の主な方法
定着には大きく3つの方法があります。
- 直線定着:鉄筋を折り曲げず、付着だけで必要な長さを確保する方法。
- フック付き定着:末端を90°、135°、180°などに折り曲げ、付着に加えてフックの効果で抜け出しに抵抗させる方法。折曲げの内法直径は鉄筋の種類や径で決まっています(鉄筋の曲げ径、鉄筋フック)。
- 機械式定着:鉄筋の端部に定着板やナットなどの金物を取り付ける方法。柱梁接合部が混み合う場合や、梁主筋の折曲げ部が納まらない場合に採用されます。
法令では建築基準法施行令第73条に、鉄筋の定着に関する規定があります。要点は、鉄筋の末端を原則としてかぎ状に折り曲げること、異形鉄筋では柱・梁(基礎梁を除く)の出隅部分と煙突以外は折曲げを省略できること、梁主筋を柱に定着する場合は柱に差し込む長さを主筋径の40倍以上とすること(柱の主筋に溶接する場合を除く)です。ただし、構造計算で安全性を確認した場合の扱いなど細かな条件があります。実際の定着長さは、コンクリートの設計基準強度、鉄筋の種類・径、フックの有無などから設計図書に定められた値を採用してください。
現場での確認ポイント
定着は配筋検査の重点項目です。柱梁接合部は柱主筋、梁主筋、帯筋が集中し、定着部が納まらなくなりがちです。着工前に施工図で鉄筋の干渉を確認し、梁主筋の折曲げ位置や定着長さが確保できるかを検討します。確認の際は次の点を見ます。
- 定着長さが設計図書どおり確保されているか
- 折曲げの位置・角度・余長が適切か
- 定着部でもかぶり厚さが確保されているか
- 鉄筋が打設中に動かないよう固定されているか
全体の配筋の中で、定着部は特に手戻りが出やすい箇所です。
鉄骨工事における定着
当社が担う鉄骨工事でも定着は重要です。柱脚のアンカーボルトは、基礎コンクリートに定着することで、柱から基礎へ引抜き力やせん断力を伝えます。ベースプレートの位置や高さが合っていても、アンカーボルトの定着が不十分では所定の性能が出ません。既存躯体への増設では後施工アンカーを使い、穿孔深さや施工方法の管理が定着性能を左右します。鉄骨建方の前に、アンカーボルトの位置、突出長さ、ねじ部の養生を確認することが大切です。
定着性能を左右する要因と、現場で起こりがちな不具合
鉄筋の定着性能は、コンクリート強度、鉄筋の表面形状(異形か丸鋼か)、鉄筋径、周囲のコンクリートの拘束、鉄筋の位置(打設時の上端か下端か)など複数の要因で変わります。設計では、これらを踏まえて定着長さが設定されています。つまり現場で「少し短くてもよさそうだ」と判断できるものではなく、変更が必要になったら必ず設計者の確認を取ります。
よくある不具合は、①柱梁接合部で梁主筋のフックが柱主筋に当たり所定位置まで入らない、②外柱の出隅で梁筋の折曲げ部と柱筋が干渉する、③打設中に定着筋が押されて倒れ、かぶりが不足する、④アンカーボルトの据付精度が悪く、位置修正のために曲げ直してしまう、などです。特に④は、アンカーボルトを現場で曲げて合わせると定着性能やねじ部を損なうおそれがあるため、無理な修正は避けます。
防ぐには、鉄筋工・型枠工・鉄骨工の三者で、事前に定着部の納まり図を共有することが有効です。鉄骨と鉄筋コンクリートが取り合う部分では、鉄骨側の貫通孔や補強リブの位置と鉄筋の定着位置を合わせて検討します。
柴田工業の現場から
アンカーボルトは建方の前に位置と突出長さをもう一度見ておくことにしています。定着そのものは後から直せないので、基礎の打設前の確認が一番大事だと感じます。