隅出し溶接に関する建設現場イメージ
Corner Start Welding

隅出し溶接

Corner Start Welding

工事の種類
すみだしようせつ

隅出し溶接とは

隅出し溶接(すみだしようせつ)は、鋼部材の隅角部(コーナー部分)や複数の部材が交わる箇所(T字接合、L字接合など)で溶接を開始する際に、溶接金属の欠陥(ポロシティ、割れ、融合不良)を防止するための溶接作業です。特に鉄骨工事における梁梁接合、柱梁接合の隅角部では、複雑な応力集中が発生するため、溶接品質が構造耐力に直結します。

「隅出し」とは、隅角部での溶接を良好な品質で開始することを意味し、以下のような対策を講じます:

  • 隅角部手前の「焼き板」で予熱と品質調整
  • 溶接開始位置の選定
  • 溶接パラメータの調整

隅角部溶接で発生しやすい欠陥

隅角部では、以下のような溶接欠陥が発生しやすくなります:

  • ポロシティ(ガス巣) — 溶接金属に気孔が残存する欠陥。隅角部では溶接池の形状が不安定になり、ガスの排出が不完全になりやすい
  • 割れ — 隅角部の応力集中により、冷却過程での熱応力が高くなり、特に高強度鋼で割れが発生しやすい
  • 融合不良 — 隅角部では、複数方向からの熱入力があり、溶け込みが不均一になりやすい
  • 咬み込み(ラップ) — 母材と溶接金属の境界が不完全に融合し、応力集中点になる

隅出し溶接の技術的対策

隅出し溶接の品質を確保するための対策は以下の通りです:

1. 焼き板による予熱と品質調整

隅角部手前(通常150~200mm前方)に「焼き板」(追加の鋼板)を配置し、溶接ルートを調整します:

  • 焼き板での予備的な溶接で、母材を予熱し、熱のばらつきを減少させる
  • 焼き板での溶接品質(ビード形状・溶け込み)を確認してから、本体部への溶接に進む
  • 焼き板を除去して、隅角部での本溶接を開始する

この焼き板溶接部は、最終的には切除処理されるため、本体部の溶接欠陥防止に専念できます。

2. 溶接開始位置・溶接方向の工夫

  • 隅角部の「奥側」から溶接を開始し、手前に向かって溶接進行させる方法(逆方向溶接)で、池の安定性を確保
  • 複数ビードの場合、第1ビード目は隅角奥側から開始し、完全に良好な融合を確認してから次ビードに進む
  • 溶接シーケンスの設定で、隅角部への熱入力の偏りを避ける

3. 溶接パラメータの調整

  • 隅角部での溶接電流・電圧・溶接速度を、板厚・材質に応じて最適化
  • 予熱温度の管理(特に低温環境・高強度鋼での冷却速度制御)
  • パス間温度の管理(ビードとビードの間に過度な冷却が生じないよう)

4. 溶接技能者の選定と教育

  • 隅角部溶接は高度な溶接技能が必要なため、JIS溶接技能者の中でも特に経験豊富な者を配置
  • 複雑な接合部(T字、十字接合)での隅出し溶接は、事前に溶接実験で手法を確認

隅出し溶接と超音波探傷検査の関係

隅角部の溶接欠陥は、目視検査では発見が困難であり、超音波探傷検査やX線透過試験が実施されます。特に応力が集中する構造重要部では、100%検査が要求されることがあります。

隅出し溶接の技術水準を維持するためには、①焼き板による事前練習、②隅角部への溶接施工前の溶接実験による手法検証、③施工中の品質確認検査(超音波探傷)という段階的な品質管理が必要です。

主要な対策
焼き板による予熱、溶接開始位置・方向の工夫、パラメータ調整、技能者の選定
技能要件
JIS溶接技能者、複雑接合部での経験が必須
検査方法
超音波探傷検査、X線透過試験、マクロ観察による欠陥確認

柴田工業の現場から

石堂 洋三
石堂 洋三 現場管理・積算・調達

隅出し溶接は見た目では良さそうに見えても、内部に欠陥があることが多い。焼き板の段階で十分な試行を重ね、本体溶接に臨むことが大切です。最初の数十ミリが品質を左右するという心持ちで対応しています。

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