
鋼材塗装検査
Steel Member Paint Inspection
鋼材塗装検査の目的と重要性
鋼材塗装検査(こうざいとそうけんさ)は、鉄骨工事において、搬入された鋼材の塗装状態が設計仕様を満たしているかを確認する品質管理業務です。塗装は鋼材の防錆、美観、耐候性を確保する重要な施工工程であり、検査不備が後年の腐食・美観低下につながります。
柴田工業では、製造工場からの納入時点で塗装検査を実施し、不良部材の検出と改善指示を行います。
塗装検査の主要項目
鋼材塗装検査は以下の項目を総合的に評価します。
膜厚測定:設計仕様で指定された塗膜厚さ(例:100µm)が達成されているかを、JIS K 5600に準拠した膜厚計で測定します。測定位置は各部材の複数箇所(上面・側面・下面)で実施し、最小値が仕様値以上であることを確認します。
付着性試験:クロスハッチテスト(刃を格子状に入れて粘着テープで剥離)により、塗膜が素地にしっかり付着しているかを評価します。JIS K 5400では5段階評価(5B~0B)で判定され、通常「3B以上」が合格基準です。
外観検査:表面欠陥の有無(気泡、垂れ、塗り漏れ、外来物混入)を目視確認します。許容される傷の大きさは仕様書で定められ、許容範囲を超える欠陥は塗り直しの対象となります。
色の確認:規定された色(例:赤茶色、銀色など)であること、色ムラがないことを確認します。
検査不合格時の対応
膜厚不足、付着不良、外観欠陥が見つかった場合、メーカー(塗装業者)に修復を指示します。対応方法は以下の通りです。
- 膜厚不足:再塗装(塗り増し)。既存塗膜の研磨後に上塗りを追加
- 付着不良:全面削落して下地から再塗装。原因は素地処理不良(錆・油分の除去不十分)にあることが多い
- 外観欠陥:許容範囲内の場合は承認。範囲外の場合は修復、許容範囲内に収まるまで繰り返し
塗装検査の時期と体制
検査は製造工場での完成検査(メーカー実施)と、搬入時の受入検査(発注者側実施)の2段階で行われます。柴田工業では、受入検査時に厳密な膜厚測定と外観確認を行い、以下の場合は現場搬入を拒否する基準を設けています:
- 膜厚が仕様値の90%未満
- 付着性試験で「2B」以下
- 許容範囲外の外観欠陥
このように厳格な受入検査を実施することで、施工後の塗装不良による修補工事を防ぎ、建物の長期的な耐候性を確保しています。
膜厚測定の実務ノウハウ
膜厚計には、磁性皮膜用(鉄素地上の膜厚測定に使用)と電磁式(非磁性素地にも対応)の2種類があります。鋼材のような磁性素地の場合、磁性皮膜用膜厚計が標準です。
測定時の注意点:
- 素地の凹凸により測定値がばらつくため、各部材最低5点以上の測定を実施
- 溶接部周辺は膜厚が薄くなりやすいため、重点的に確認
- 膜厚計の定期校正(月1回以上)により、測定精度を確保
- 温度低下により塗膜は収縮するため、冬季測定時は膜厚値が夏季より若干低くなることを考慮
多くの現場では、受入検査結果を記録簿に記載し、施工完成後の保証資料として保管します。
環境配慮と新しい塗装仕様
従来、鋼材の錆止めには鉛を含む塗料が使用されていましたが、環境汚染のため現在は使用禁止(RoHS指令対応)。代わりに、有機亜鉛系、シリケート系など無鉛塗料が主流となっています。
また、防錆塗装仕様も進化し、2液型ポリウレタン塗料(高耐候性)や水性エポキシ樹脂(低VOC)などが採用される事例が増えています。これらの新仕様への対応も、検査時の膜厚・付着性基準に反映される必要があり、仕様書との照合が重要です。
柴田工業の現場から
塗装検査は『ビジュアルチェック』と思われやすいですが、膜厚計を使った定量的な検査が本質です。搬入時に不合格品をしっかり拒否することで、後々のクレーム、修補工事を防ぎます。供給メーカーとの信頼関係も、厳密な検査に基づいて成り立っています。