高力ボルト緊張管理に関する建設現場イメージ
High-Strength Bolt Tensioning Management

高力ボルト緊張管理

High-Strength Bolt Tensioning Management

管理の5本柱
こうりょくぼるときんちょうかんり

高力ボルト緊張管理の意義

高力ボルト緊張管理は、鉄骨工事で使用される高力ボルト(F10T、F11T等の高張力ボルト)を、設計で規定された緊張力に正確に締め付け、その状態を維持・確認する管理プロセスです。鋼構造の接合面に適切な圧力を加え、摩擦力で荷重を伝達する摩擦接合方式では、ボルトの緊張力が接合性能を直接左右するため、この管理が工事品質を決定する重要な工程となります。

トルク管理とも呼ばれ、施工管理技士による厳格な工程管理と記録が求められます。

高力ボルト緊張の施工方法

高力ボルト緊張には、主に以下の3つの方法が使用されます:

1. トルク法(torque control method)
ボルトに加わるトルク(回転力)を測定し、その値から締め付け力を推定する方法です。最も一般的に使用されており、以下の式で緊張力を算出します:

必要トルク = 規定緊張力 × ボルト径 × 係数(摩擦係数考慮)

トルク制御法では、キャリブレーション済みのトルクレンチを使用し、1本あたりの施工記録(ボルト番号、測定トルク値、施工者名、日時)を保管することが品質管理の基本です。

2. 回転角度法(turn-of-nut method)
ボルトをスナッグタイト状態(接合面がきっちりしまる程度)まで手締めした後、ナットをさらに一定角度(通常30°~180°)回転させる方法です。高精度が求められる場合に採用されます。

3. ダイレクトテンション法(DT法)
ボルトの延伸量を直接測定し、設計応力に合わせる最新の方法です。ボルトの軸方向変位を測定することで、より正確な緊張力管理が可能です。

現場での管理体制と記録

高力ボルト緊張管理は、以下のような組織的体制で実施されます:

  • 施工者選定:高力ボルト施工技能講習修了者が施工に当たる
  • 工具管理:トルクレンチの定期キャリブレーション(最低でも3ヶ月ごと)実施
  • 材料確認:ボルト・ナット・ワッシャの規格確認(F10T等の刻印確認)
  • 施工記録:1本ごとのトルク値、施工日時、施工者印を記載した記録表を保管
  • 再締め確認:施工後、所定期間経過後(通常24時間後)に再測定し、緩み具合を確認

これらの記録は、実施工程表と同様に、竣工時の建物引き渡し時に設計者・施工者間で確認される重要な資料となります。

環境条件とトルク値の補正

実務では、気温や湿度といった環境条件がボルト緊張に微妙な影響を与えることが知られています。特に冬季の低温環境では、鋼材の収縮によってボルトの緊張力が設計値より大きくなるリスクがあります。逆に、高温環境や直射日光下での施工では、膨張による緊張力低下が発生する可能性があります。

JIS B 1186や日本建築学会の指針では、環境条件に応じたトルク補正係数が示されており、季節や現場条件に応じて規定トルク値を適切に補正することが推奨されています。このため、施工管理技士は施工時の気温を記録し、必要に応じて補正トルク値を設定する配慮が求められます。

接合精度
高力ボルトの緊張力が摩擦接合の性能を決定。規定値への正確な締め付けが品質保証の基本
管理方法
トルク法・回転角度法・DT法があり、現場条件に応じて選択。工具のキャリブレーション必須
記録・追跡
1本ごとの施工記録を保管し、再締め確認で緩み具合を検査。竣工時の品質証拠となる

柴田工業の現場から

佐藤世人
佐藤世人 工事部

高力ボルトの締め付けは、ほんの少しの緩みで接合性能が低下します。トルク値は毎回チェックしますし、冬季は気温補正もかけます。記録も1本ごと残すので、手間がかかりますが、建物の安全性を確保するためには省けない工程ですね。

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