
腹起し
Horizontal Strut for Earth Pressure
腹起しの役割
腹起し(はらおこしざい)は、山留め壁が受ける土圧を、切りばり(きりばり)や抱き込み鋼管へ効率的に伝達する水平構造部材です。根切り工事において、山留め壁の変位を最小限に抑え、周辺地盤や隣接建物への沈下影響を防止する重要な役割を担っています。
腹起しに作用する曲げやせん断応力は大きく、適切な設計と施工が必須です。掘削深度に応じて段階的に配置され、各段階での荷重変化に対応できる堅牢性が求められます。
腹起しの標準部材
H形鋼(一般的にH-400×200、H-500×200等)が最も広く使用されます。断面が大きく、曲げ剛性に優れているため、長スパンの腹起しに適しています。柱脚部での固定方法は、鉄骨工事同様にベースプレートとアンカーボルトにより親杭や土留め壁に緊結されます。
箱形鋼管(一般的に□-400×400×16等)も使用される場合があり、特に高い捩れ剛性が必要な場合に採用されます。また、鋼管パイプラーメン構造として、複数の腹起しを組み合わせることで、より複雑な掘削形状に対応できます。
腹起しの配置・設計
腹起しの高さ位置は、掘削段階に応じて3~4段程度が一般的です。各段の間隔は、土圧分布と部材の曲げ応力を考慮して決定されます。浅い位置の腹起しほど土圧が小さく、深い位置ほど大きな応力を受けます。
腹起し間のスパンは、通常5~10m程度に設計されます。スパンが長すぎると応力が急増し、短すぎると腹起し部材数が増加し、親杭や山留め壁への負担も増します。FEM解析や応力計算により、最適なスパン設定を決定します。
施工時の留意点
腹起しの建込みは、親杭への立上がり配管や、それらの固定精度が施工の鍵となります。取付けボルトの仮止めから本締めまで、段階的に確実に行う必要があります。特に、複数の腹起しが同時に荷重を受けるため、各部材の荷重分担が均等になるよう調整が重要です。
掘削時の腹起し応力変化を監視し、必要に応じて切りばり増設など補強措置を講じます。また、腹起しの撤去時期は、地下構造体のコンクリート強度やアンカーボルトの引き抜き強度を確認してから実施します。
腹起しの応力計算と設計手法
腹起しに作用する荷重は、土圧静止計算(カントレバー計算)またはFEM解析により算定されます。親杭を回転中心とした棒部材計算では、腹起しを単純梁として扱い、両端の親杭で支持される条件で応力を求めます。
実際には、複数段の腹起しが相互作用し、土圧の再配分が生じるため、3次元FEM解析が最も精度が高いです。親杭の曲げ剛性、腹起しの接合部の剛度、切りばりの張力などを総合的に評価し、各部材の応力や変位を予測します。
許容応力度設計では、腹起し部材に作用する最大曲げ応力、せん断応力、および複合応力に対して、鋼材の許容応力度以下であることを確認します。また、トルク管理に基づくボルト張力確保も重要で、接合部の回転剛性に直結します。
柴田工業の現場から
腹起しのH形鋼は大型部材で、現場への搬入・建込みには大型クレーンが必要です。積算時にはクレーン費、仮設架構組立費を忘れずに計上します。また、掘削に伴う段階的な増設がある場合は、追加工事申請に含めるよう注意が必要です。