
腹起し設計
Wale Design for Shoring Wall
腹起し設計の目的と構成
腹起し設計とは、根切り工事において山留め壁(親杭横矢板やSMW工法など)に水平方向に作用する土圧を受け止め、これを支保工系統(切りばり・ジャッキ等)に伝達するための腹起し部材(通常H形鋼)の設計です。根切り工事の安全性と経済性を大きく左右する重要な仮設設計業務です。
腹起しは山留め壁の背面で、複数段階に配置されます。掘削深さ、地盤条件(粘性土・砂質土等)、周辺建物の位置などに基づいて、各段の腹起しに作用する土圧を計算し、部材の種類・断面・配置間隔を決定します。
腹起し設計の計算フロー
腹起し設計では、まず仮設工事リスク評価を行い、掘削段階別(1段目掘削時~最終掘削時)の土圧分布を推定します。通常、山留め壁背面に働く主働土圧(主動土圧)をランキン理論やクーロン理論により計算します。
次に、各掘削段階における腹起しの配置位置を決定し、それぞれの梁間スパンと荷重を算定します。腹起し部材(H形鋼など)の許容応力度設計を行い、部材の曲げモーメント、せん断力に対する安全性を確認します。同時に、腹起しと山留め壁の接合部、腹起しと支保工の接合部の詳細設計も実施し、伝力箇所での応力集中に対する補強を検討します。
複数段の腹起しがある場合、各段間の相互作用を考慮した安定計算も必要です。特に腹起し自体の自重による二次応力や、根入れ部での反力計算も含めて、精密な構造計算が求められます。
施工段階との連携と実務的配慮
腹起し設計は、実際の掘削施工との連携が不可欠です。掘削段階に応じて腹起しを段階的に取り付ける場合、各段階での部材応力が最大となるタイミングを予測し、必要な部材配置と締結順序を明確にしておく必要があります。
また、鉄骨仮設工事設計と同様に、腹起し設計も完成後の撤去計画を含めた全体計画である必要があります。掘削完了後、次工程(地下躯体工事等)へ移行する際の腹起し撤去順序、その時の部材応力変化についても事前に把握しておくことが重要です。
地盤条件と腹起しレイアウトの最適化
粘性土と砂質土では、同じ掘削深さでも作用する土圧が大きく異なります。粘性土では若干の凝集力があるため、砂質土に比べて低い土圧となり、腹起しの本数や断面を削減できる可能性があります。一方、地下水位が高い砂質土では、水圧も含めた計算が必要となり、腹起しに作用する全体荷重が大幅に増加します。
こうした地盤条件を踏まえ、腹起しの配置間隔や段数を最適化することで、仮設費用を削減できます。例えば、中堅スパンの腹起しの本数を減らし、代わりに部材断面を増大させるなど、経済性と安全性のバランスを取った設計が実務では求められます。
柴田工業の現場から
腹起し設計の精度が低いと、掘削時に予期しない壁の変形が生じます。地盤調査データをしっかり確認して、地質ごとの設計を使い分けることが大切です。現場でも日々の壁の状態を監視し、設計値との乖離をチェックしています。