箱詰め仕組(ダブルナット方式)に関する建設現場イメージ
Box Nut Locking System (Double Nut Method)

箱詰め仕組(ダブルナット方式)

Box Nut Locking System (Double Nut Method)

工事の種類
はこつめしくみ

箱詰め仕組とは

鉄骨接合部では、高力ボルトに加わる振動や温度変化により、ナットが回転して緩むリスクがあります。箱詰め仕組(ダブルナット方式)は、本ナットの上に座金と副ナット(上ナット)を重ね、両ナットを相互に固定することで、この緩み防止と脱落防止を図る施工手法です。特に露天での屋外工事や、温度サイクルが激しい環境での採用が推奨されます。

施工手順と仕組の構成

箱詰め仕組の標準的な組立順序は以下の通りです:

  • 第1段階:ボルト孔への挿入:ボルトをナット孔に挿入し、ボルト軸部がナット座面に接触するまで貫通
  • 第2段階:本ナット(下ナット)の設置:最初のナットを手で緩く取り付け、指定されたトルク値の50~70%程度で半締めする。この段階ではまだボルト軸部との密着は不完全
  • 第3段階:座金の挿入:通常、鋼製座金(あるいは特殊座金)をナット上面に配置。ナット頭部との接触面を確保
  • 第4段階:副ナット(上ナット)の設置:座金上面に副ナットを置き、本ナットと相互に固定するため、本ナットと副ナットを交互に締付。この時、ボルト軸の自由回転を防ぐため、スパナ・レンチペアで両側から同時に回す
  • 第5段階:最終締付**:指定トルク値に達するまで、本ナット→副ナット→本ナット…の順で、各ナットが1mm~2mm程度上昇することを確認しながら締付を繰り返す

完成状態では、副ナットと本ナットが互いに食い込み、ナット面同士の摩擦で回転が防止されます。

従来のロック方法との比較

高力ボルトの緩み防止には複数の方法が存在します:

  • 弾性座金(スプリングワッシャー):安価だが、長期使用での圧縮永設が問題
  • 歯付き座金:ボルト孔周辺の部材傷つけリスク
  • ボルト回転止め板:複数ボルトを一括固定するため、個別ボルトの点検が困難
  • 箱詰め仕組(ダブルナット):高い信頼性で、特に高い振動環境や重要接合部で推奨

品質管理と検査

箱詰め仕組の品質確保には、以下の管理が必須です:

  • トルク値の適切な段階管理:各段階でのトルク値が規定されており、計画を立てた上で実施
  • ボルト軸部の確認:副ナット取付前に、ボルト軸の露出長を測定し、座金の厚さ分を加算した値が規格内であることを確認
  • 装着後の回転確認:組立完了後、手工具(スパナ)で本ナットと副ナットの相対位置がずれないことを確認
  • 施工記録**:各接合部について、トルク値、完成日時、点検者名を記載した施工記録表を作成

トルク管理の一形態として、箱詰め仕組施工の記録は工事台帳に保存されます。

現場での箱詰め仕組施工の課題と対応

箱詰め仕組は理論的には高い信頼性を持ちますが、現場施工では複数の難題が生じます。最大の課題は、本ナットと副ナットを完全に同期させながら締付することの難しさです。熟練者でも、締付力の不均等や段階的な回転ムラが発生しやすく、結果として片側のナットが過度に締付されたり、逆に緩みが残ることがあります。

対策として、新鋭の現場ではトルク計測機器(デジタルトルクレンチ)を導入し、各段階でのトルク値を数値化して記録します。また、複数の接合部を同時進行で施工する場合、作業班を分けて一つの班が一つの接合部を完全に完成させてから次に移る方式を採用することで、ヒューマンエラーを削減できます。

さらに、鋼材の表面状態(錆、グリース、汚れ)が摩擦係数に大きく影響し、同じトルク値でも実ボルト軸の応力が変わることが知られています。施工前に部材表面をワイヤブラシで清掃し、一定の粗さを確保することが、品質のばらつき低減に有効です。

施工ステップ数
5段階(挿入→本ナット半締→座金配置→副ナット装着→最終締付)
最終完成状態
本ナット・副ナット間の相対回転が0(ナット面同士が食い込み状態)
施工記録必須項目
トルク値、施工日時、点検者名、ボルト軸露出長確認

柴田工業の現場から

石堂 洋三
石堂 洋三 現場管理・積算・調達

箱詰め仕組は手間のかかる施工ですが、それだけの効果があります。特に長期的な振動環境下での緩み防止性能は他の方法を圧倒します。ただし、施工品質が均一でないと意味がないため、熟練者による直接指導と厳密な記録管理が欠かせません。工程計画でも余裕を持たせて、急速施工による品質低下を防ぐことが大切です。

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