鉄骨上げ込み設計に関する建設現場イメージ
Steel Frame Lifting Design

鉄骨上げ込み設計

Steel Frame Lifting Design

工事の種類
てっこうあげこみせっけい

鉄骨上げ込み設計の目的

鉄骨上げ込み設計(以下「上げ込み設計」)は、個別の鉄骨部材を工場から現場へ搬入し、クレーンで吊り上げて最終位置に配置するまでのプロセスを詳細に計画する設計業務です。単なる吊り上げではなく、以下を総合的に決定します:

  • 吊り具(ワイヤロープ、シャックル等)の仕様と強度確認
  • 部材重心の位置決定と吊り込み角度
  • クレーン荷重チェックと作業半径確認
  • 吊り上げ経路上の障害物回避と安全距離確保
  • 部材建て込み直前の「受け渡し」作業の手順

設計に含まれる主要要素

上げ込み設計図面には以下の情報が記載されます:

  • 部材重量と重心位置:吊り具の配置箇所が重心に対して対称となるよう指示。非対称配置による傾斜は建て込み困難と安全リスク増加を招く
  • 吊り具の配置図:部材上面に吊り孔(取扱説明書に示される)が複数ある場合、どの孔を使用するか指示
  • 吸収用ワイヤ長さと角度:吊り角度(水平からの傾き)が大きいと吊り具への応力が増大。許容範囲内(通常60°以内)に設定
  • 吊り上げ経路図:現場平面図上で、部材がどのルートで上昇し、障害物(既設構造物、電線、クレーン柱等)を回避するか表示
  • 据え付け位置の誤差許容値建て精度管理の基準値を図面に記載

吊り具設計の実務

吊り具の強度計算は簡潔ですが、現場での正確な実装が重要です:

  • ワイヤロープの選定:部材重量に対して安全係数3以上を確保する。(例:100tonの部材の場合、ワイヤの破断力が300ton以上必要)
  • シャックル・ピン等の確認:ワイヤ同様に強度計算を実施。脱落防止のため、ピンの開き止めを確実に
  • 吊り具の検査:毎工事前に目視検査(キズ、変形、腐食の有無)と、定期的な破断試験が法定要件(クレーン作業の安全管理
  • 吊り具の再利用管理:吊り具は複数プロジェクトで繰り返し使用。使用履歴を記録し、疲労による強度低下を監視

建て込み作業との連携

上げ込み設計は施工段階でも活用されます:

  • 作業員の役割指定:吊り上げ指揮者(信号手)、ガイドロープ操作員の配置を設計図で指示
  • 部材受け渡し仮支持:部材が最終位置に近づいた際、クレーンの荷重を徐々に仮ボルト(仮ボルト)に移す手順を記載
  • 緊急時の対応:吊り上げ中の異常(ワイヤ損傷、吊り具の傾き)を発見した際の停止・下ろし手順

大型梁・柱の複合吊り上げと多段組立への対応

複数階建ての大規模鉄骨工事では、20tone以上の大型梁や、100toneを超える柱を単体で吊り上げるケースが増えています。この場合、上げ込み設計は単なる吊り方ではなく、現場組立全体の可視化が必須となります。例えば、長スパン梁を複数本並べて吊り上げ、同時に複数本を梁受けに据え付けるような作業では、クレーン操作の難度が急増します。このため、BIM(建築情報モデリング)を活用して、吊り上げ時点での建物周辺の立体環境をシミュレーション、クレーン安全半径内に他の部材や人員がいないか事前確認する手法が普及しています。また、風速が強い現場では、ワイヤ上部での風の影響を計算に組み込み、吊り角度を調整する高度な検討も行われます。

重心計算
吊り具配置は部材重心に対して対称配置。計算誤差は傾斜・転倒リスク
安全係数
吊り具破断力は部材荷重の3倍以上(厚生労働省告示第154号)
検査責任
<a href='/glossary/crane-operation-anzen/'>クレーン操作者</a>と<a href='/glossary/sekou-kanri-gishi/'>施工管理技士</a>による合同検査(毎工事毎に実施)

柴田工業の現場から

佐藤世人
佐藤世人 工事部

吊り上げは鉄骨工事の最も神経を使う作業です。上げ込み設計の精度が悪いと、部材が斜めになって、現場でのジャッキアップや部材回転が発生します。特に重い梁は、ワイヤ角度がわずか10度変わると吊り具への応力が大きく変わります。毎回、吊り上げ前にクレーンオペレーターと図面を確認し、指揮者との意思疎通を完全にします。安全は設計段階から始まると痛感します。

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