
脚立
Stepladder
脚立とは
脚立(きゃたつ)は、はしご状の脚部を山形に開いて自立させ、天板と踏さん(踏み面)を使って高さのある場所に手や工具を届かせるための道具です。建設現場では、天井下地の取付け、設備や電気の配線、仕上げ材の取付け、鉄骨廻りの軽作業など、足場を組むほどではない高さの作業で広く使われています。材質はアルミ合金製が主流で、軽くて持ち運びやすい反面、使い方を誤ると墜落・転倒につながります。
よく似た道具に、立てかけて使う「はしご」や、作業床を備えた「可搬式作業台」があります。脚立は自立する点ではしごと異なり、作業床が十分に広くない点で作業台と異なります。この違いを理解せずに「足場の代わり」として使うことが、災害の典型的な原因です。
法令上の位置づけ
脚立の構造については、労働安全衛生規則第528条に要件があります。主な内容は次のとおりです。
- 丈夫な構造とすること
- 材料は著しい損傷、腐食等がないものとすること
- 脚と水平面との角度を75度以下とし、折りたたみ式のものは、角度を確実に保つための金具等を備えること
- 踏み面は、作業を安全に行うために必要な面積を有すること
開き止めの金具が確実にロックされていないと、荷重で脚が開いて転倒します。また、高さ2m以上の箇所で作業を行う場合は、原則として作業床の設置が求められます(同規則第518条)。脚立で済ませてよい作業なのか、足場や高所作業車などの設備を計画すべき作業なのかは、段取りの段階で判断する必要があります。この判断は安全管理の重要な一部です。
現場での使い方と点検の要点
使用前には、次の点を確認します。
- 脚や踏さんに曲がり・亀裂・腐食がないか
- 開き止めが確実にかかるか、脚の先端のゴム(脚キャップ)が摩耗していないか
- 設置面が水平で固く、滑りやすい状態や段差がないか
使用中は、天板の上に乗らない、天板にまたがらない、身を乗り出して作業しない、脚立を開いたまま移動しない、昇り降りでは三点支持(両手両足のうち常に三点で体を支える)を守る、といった基本が重要です。最上段や天板付近の使用可否は製品ごとに表示があるため、各メーカーの表示と取扱説明書に従ってください。
朝礼やKY活動の場で「今日どこで脚立を使うか」「足元に配管や開口はないか」を確認し、危険予測・評価につなげると効果的です。複数人が同じ脚立を使い回す現場では、点検の担当者を決めておくと、損傷品の見落としを減らせます。
仮設鍛冶工事・鉄骨工事での注意
鉄骨廻りでは、床にデッキ材の端部や開口、残材、溶接ケーブルなどが散在しやすく、脚立の設置面が不安定になりがちです。仮設鍛冶工事や鉄骨工事で脚立を使う場合は、設置前に養生や整理を済ませ、開口部や床端の近くでは使わない、あるいは手すり先行工法などで先に墜落防止措置を講じる、といった対応が必要です。作業指揮は職長が行い、作業手順に脚立の使用条件を明記しておきます。
「脚立足場」と「脚立の天板作業」が危ないと言われる理由
脚立の災害で多いのは、作業中に姿勢を崩して墜落するケースです。理由の一つは、脚立の作業面が狭く、手すりもないことです。人は手元の作業に集中すると、重心が足の支持範囲から外れていることに気づきにくくなります。天板に立つと、体を支える手がかりもほぼなくなります。
また、2台の脚立に足場板を渡して作業床とする「脚立足場」は、固定が甘いと足場板がずれ、脚立自体も開きや傾きが生じます。作業内容や高さによっては、はじめから可搬式作業台、ローリングタワー、高所作業車、あるいは本設に近い足場を選ぶほうが、安全性も効率も上がります。
現場では「ちょっとだけだから」という理由で脚立が選ばれがちですが、作業の長さではなく、高さ・姿勢・使用場所の条件で判断することが基本です。重い工具や資材を持っての昇降は避け、道具は腰袋やロープで上げ下げする、荷揚げは別の人が行うなど、段取りで脚立上の作業を軽くしておくこともポイントです。
柴田工業の現場から
脚立は身近な道具ですが、慣れているときほど無理な体勢で使いがちです。使う前に開き止めと設置面を見る、届かなければ降りて置き直す。この二つを守るだけでも、ヒヤッとする場面はかなり減ると思います。