
一側足場
Single-row Scaffold (Bracket Scaffold)
一側足場とは
一側足場(ひとかわあしば)とは、建地(垂直の支柱)を建物側に一列だけ立てて構成する足場です。建地を二列立てる「本足場」に対し、一列で済むため部材が少なく、組立ても省力化できます。その反面、構造的な安定性は本足場より劣ります。そのため労働安全衛生規則では、足場の幅が確保できず本足場を使用することが困難な場合に使うものと位置づけられています。具体的には、敷地境界が近い、隣地との離隔が小さいといった状況です。
代表的な形式に、建地に取り付けたくさび緊結式のブラケットで作業床を支える「ブラケット一側足場」があります。外壁の改修や、鉄骨の取合い部の仕上げ・補修など、比較的軽作業の場面で使われることが多い足場です。一般的な足場の中でも、使える条件が限られる点に注意が必要です。
構造と使用上の考え方
一側足場は建地が一列のため、足場自体の自立性が低く、倒壊や転倒を防ぐには建物側への固定(壁つなぎ)が欠かせません。壁つなぎの間隔や取付け位置は、足場の種類や高さに応じて規則・メーカーの組立図で定められています。計画段階で躯体側に取付け可能な位置があるかを確認しておく必要があります。
作業床については、幅40cm以上、床材間の隙間3cm以下とするなど、規則に定められた基準に従います。墜落の危険がある箇所には、高さ85cm以上の手すりと中さん等(または同等以上の措置)を設けます。足場材の組合せ、許容荷重、最大積載荷重の表示は、使用する足場の仕様書で確認します。
一側足場でも、足場の組立て・解体・変更の作業には、高さ5m以上などの条件に該当する場合、足場の組立て等作業主任者の選任が必要です。作業主任者の指揮のもとで作業し、手すり先行工法を採用すると、組立て時の墜落リスクを下げられます。厚生労働省は「手すり先行工法等に関するガイドライン」を示しており、これに沿った運用が推奨されています。
点検と安全管理
足場は、組立て後・作業開始前・強風や大雨、中震(震度4程度)以上の地震の後などに、点検して異常があれば補修してから使うことが求められます。点検の結果は記録して残します。点検の考え方は足場の点検や仮設足場の定期検査で整理しています。
一側足場は幅が狭いため、資材を置くと通路が確保できず、つまずきや墜落の危険が高まります。作業床には必要最小限の材料・工具のみを置き、不要な物は都度片付けることが基本です。また、使用条件を超える重量物の積載や、足場を荷揚げ設備として使うことは避けます。
弊社のような仮設鍛冶工事では、計画段階で足場の種類を選定する際、現場の幅と躯体の取付け条件から一側足場が適当かを判断します。計画の流れは仮設足場計画を参照してください。全体の考え方は安全管理にも通じます。
本足場に切り替えるべきかの判断
一側足場は「幅が足りないから仕方なく使う」ものであり、安易に選ぶと作業性・安全性の両面で不利になります。まず確認すべきは、敷地境界や隣地建物との離隔が本当に本足場を設置できない寸法かどうかです。数センチの差であれば、隣地所有者との協議、仮囲いや養生計画の見直し、一部だけ張出しや吊り足場にするなど、別案が成り立つことがあります。
次に、作業内容を確認します。重量のある部材の取付け、溶接作業、資材の仮置きを伴う作業は、一側足場の作業床幅では不安定になりやすく、別の足場形式や高所作業車の併用を検討すべき場面です。高所作業車は設置スペースが必要なため、これも現場条件との兼ね合いで決まります。
さらに、壁つなぎを取れる躯体があるか、外壁仕上げ材の撤去や貫通が必要かといった施工上の制約も影響します。最終的には、足場の組立図、荷重条件、点検体制を整理したうえで、元請・足場業者・作業主任者が合意して採用を決めることが重要です。判断の根拠を計画書に残しておくと、後の設計変更や是正の際にも役立ちます。
柴田工業の現場から
一側足場は幅が狭いぶん、荷物を置いただけで通路がなくなります。工事部としては、材料は最小限、使ったらすぐ片付けを徹底するようにしています。